menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

製造業

第257号 工場を、モノづくりを見せるショールームとして活かせ

柿内幸夫─社長のための現場改善

 皆様、楽しい連休を過ごされたことでしょう。リフレッシュしたところでまたみんなで改善をいたしましょう。

 下の写真は日5月2日に仕事で山形に行ったときに、山形駅近くの霞城(かじょう)公園で撮ったものです。東京では3月下旬に散ってしまいましたが、ここでは満開でした。日本は広いですね。

257.jpg

 

 さて、今回も私の著書「改善の急所101項」から1項を紹介し、実践編として実例を挙げます。

 

【急所95】工場を、モノづくりを見せるショールームとして活かせ。(216頁)
 
 これだけではどういう事か分かりませんね。さっそく具体例を見て行きましょう!
 
●2012年4月 一年前のK社埼玉工場(従業員規模50人)で見た光景
 
 K社では、4月から新年度が始まります。昨年度は「改めて、5Sに力を入れる」という社長方針で、活動を始めるということでした。お伺いする前日に社長のKさんから電話で、「今回は特に、5Sについて厳しくご指摘ください」という依頼が来ていました。
 
 当日、早速現場に行って見ると、床は切粉(きりこ)の飛散で汚れており、地面にモノがじかに置いてある状態でした。要するに、まったく5Sできてない状態でした。
 
●理由を聞いてみた
 
 K社は金属の切削を中心とした加工業なので、切粉(きりこ)や切削油で汚れやすい職場が多くありました。そして、「切削加工だから、切粉の飛散は仕方がない」といった固定観念があり、もうこれ以上はムリといった、限界意識が蔓延していました。
 
 問題はそれだけでなく、モノの流れが良くないため、工程間の在庫が増えてパレットが足りず、多くの中間品が床にじかに置かれていました。
 
 汚い床にじか置きをすれば製品が汚くなるのは誰にも分かることです。しかし、その時のK社では、それは仕方がないことだと、とらえられていたということです。
 
 「どうせすぐ汚れるから」「掃除の時間を製造する時間にあてた方がいいから」「工場は汚れてるものだから」「お客さんは来ないから」…などなど、これから5Sをしっかりやろうという社長の決意とは程遠い言葉が、あきれるほどたくさん返ってきたものでした。
 
●掃除してみた
 
 実は、当時のK社には大きな問題がありました。注文量の急速な減少です。しかしK社の工場部門は、営業部門が注文を取ってくるのを待っているしかないという、何ともなさけない状況でした。
 
 そんな時、営業部門から、「新規の見込み顧客を確定顧客にするためには、工場を見てもらい納得してもらう必要がある。だから、徹底的に工場をきれいにしてほしい」という切羽詰まった依頼がありました。
 
 つまり、お客さんは来ないのではなく、工場が汚くて営業マンがお客様を呼べない状態だったのです。それが、このとき初めて分かりました。同じ会社の仲間なのに、こんな大切なことが伝わっていなかったのです。
 
 驚いたK社の製造部員は、これまで相当いい加減にやっていた5Sを真剣にやり始めました。社長も一緒にやりました。営業部の人たちも、もちろん一緒にやりました。
 
●どうなったか
 
 当然きれいになりました。ただ、ポイントはそこではありません!なんと掃除するなかで「これって○○だね」「ここは○○できる」という発見がたくさん出てきたのです。
 
 例えば、散乱していた切粉や切削油は、自動的に一か所に集まるようにできました。というのも、現在の技術では切粉を出さずに金属を削ることはできないけれど、どこから切粉が出てくるかは分かっています。
 
 材料と刃が接する小さな一点からのみ出続けます。そうだと分かれば、その近くに小さな当て板を付ければ(局所カバー)、出た切粉は飛び散らず、その下に用意した入れ物にすべて収まります。切削油も同じ原理で集められました。
 
 それともう一つ、営業の人の意見も大いに役に立ちました。「これで、お客様は我々のことを気に入って下さるかな?」という、外部の人からの目線が気になり始めたのです。
 
 こういう5Sをはじめた結果、一年後の今はどうなっているか…続きは次回にお話しいたします。
 
 

◎柿内幸夫と行く!隠れた「お手本」企業の工場見学
  
http://jmcasemi.jp/seminar/seminar.php?CONTENT_ID=668

 

257-2.jpg

copyright ゆきち先生 http://yukichisensei.com/

 

※柿内先生に質問のある方は、なんでも結構ですので下記にお寄せください。etsuko@jmca.net 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第256号 改善の急所 実践編前のページ

第258号 営業部門と製造部門が一体となる「全社的5S」K社の事例次のページ

関連記事

  1. 第244号 大きな成果を求めない改善

  2. 第212号 緊急提言!ヒト中心の安全点検をしよう

  3. 第223号 今年一年の教科書をつくろう

最新の経営コラム

  1. 楠木建が商売の原理原則を学んだ「全身商売人」ユニクロ柳井正氏

  2. 第10講 WILLとMUSTをCANに変える:配属に不満がある社員とどう関わるか

  3. 第147回『紫式部と藤原道長』(著:倉本一宏)

ランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. 税務・会計

    第1回 京セラ実学への思い
  2. サービス

    第133話 《福岡の隠れた秘宝》奈良屋町 青 (アオ、Restaurant AO...
  3. マネジメント

    第15回 社員の幸せを考えるブレない経営とは?~事例:ケーズデンキ
  4. マネジメント

    第189回 数字で話す、教える
  5. 採用・法律

    第84回 『年次有給休暇のモヤモヤ』
keyboard_arrow_up