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戦略・戦術

第139話 平成30年の税制改正の問題点は?

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昨年12月に自民党から、税制改正大綱が公表されました。
今回は、税制改正のポイントの一つ、一般社団法人の改正についてご説明します。

私は、一般社団法人を使った事業承継対策を勧めていません。
経営の安定性が失われるからです。

ところが、税理士や弁護士、コンサルタントのなかには、一般社団法人を薦める方が多くいらっしゃいました。

1.一般社団法人とはどんな組織で
2.なぜ、節税になるのか?
3.税制改正でどうなるのか?

それぞれ見てゆきましょう。

1.どんな組織か?

一般社団法人は、イメージするなら、紳士クラブです。
組織を構成する役員の多数決の決議で、組織運営について自由に決めることができます。

一般社団法人をつくる場合は、最低2人いれば設立できます。
設立にあたっては、出資をする必要はありませんし、誰でも自由につくることができます。

つまり、おカネがなくてもつくれる、1人1票の組織ということです。

2.なぜ、節税になるのか?

一般社団法人の一番の特徴は、株式会社とちがって、設立するときに出資が不要、つまり、出資持分がない、ということです。

これが相続税という意味では、大切なポイントになります。

株式会社は、出資比率に応じて株主が意思決定し、株主が亡くなれば、株式を相続する家族に相続税がかかります。

ところが、一般社団法人では、社員(※株式会社でいうところの株主)がなくなっても、そもそも持分という考え方がないので、家族には相続税がかからないのです。

父と子が社員として、一般社団法人を運営していた場合に父がなくなれば、父の代わりに、誰かが社員になるだけです。
このとき、一切お金はかからないのです。

だから、争族対策として、オーナー家の持つ株式を一般社団法人に譲渡する、という指導が、世の中で行われてきたのです。

3.税制改正でどうなるのか?

(1)全役員の50%超が同族役員の場合は、相続税がかかる

同族役員とは、次の4名です。
① 被相続人(亡くなった方)
② その配偶者
③ 3親等内の親族
④ 被相続人が会社役員となっている会社の従業員など

つまり、過半数の役員をオーナーに近い人にしていると、相続税がかかる、ということです。

(2)相続税=(一般社団法人の純資産額)÷(同族役員の数)となります。

たとえば、一般社団法人の純資産額が3億円、同族役員の数が5名いたとすると、3億円÷5名=6千万円が相続税の対象となる、ということです。

どうすれば、よいのでしょうか?

相続税がかかるのは、全役員の過半数が同族役員の場合です。
なので、同族役員の割合を50%以下にすれば、相続税の対象から外れます。

しかし、この場合は、オーナー一族で一般社団法人を支配できず、他の人が入ってきます。
リーダーシップの取れる人物が社団法人を支配してゆけばいいのですが、そのオーナーが死亡して、30年~40年後となると、経営の安定性はわかりません。

そもそも、家族、親族の身内でも対立が起こるのに、第三者を入れてしまえば、もっとややこしくなります。

家族、親族が、外部の人間にそそのかされて、気付いたら組織から追い出されていた、組織の財産を食い物にされた、という例は実際に起こっています。

せっかくの事業承継、オーナーの亡き後、兄弟や親族で内紛が発生してしまえば、何のための対策だったか、ということになるのです。

ですから、一般社団法人をつかわずに、
① 高額退職金を支給して株価を引き下げる
② 種類株を活用して、少ない株式でも支配権を承継する

これが井上式の究極の事業承継対策なのです。

 

 

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