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第86話 Z世代(の若い人)は、どんな商品を推す?

北村森の「今月のヒット商品」

9月に入りましたね。今年の夏、私にとってはブータンと秋田、2つの出張がとりわけ印象に刻まれました。ブータンを訪れて地元に根づくお酒に興味をそそられた話は前回(2024年8月)のこのコラムで綴っています。今回は秋田を訪れた折のことをお伝えしますね。

私は通信制大学の教員が本業ですが、客員の教員として秋田大学でも仕事に携わっています。夏の終わり、私は同学で催された「高大連携授業」の教壇に立ちました。地元・秋田でマーケティングに関心のある高校生が2日間のプログラムを受講するというもので、講義もあればシミュレーション形式のゲームに参加するという時間もあります。


参加してくれた高校生たちは、いわゆるZ世代に属する人たちです。キュレーション(情報の選択と整理)に長けた世代とされ、商品の購買行動で上の世代とは一線を画し、みずからの価値観をそれぞれが確立しているといわれていますね。次の消費トレンドを担う(いや、すでに担っている)世代ですから、商品開発や販促を進めるうえで彼ら彼女らの行動様式を分析するのは必須と指摘する向きも多い。

今回のプログラムに集まってくれたのは、そのなかでも「マーケティングに興味のある高校生」であるわけです。なので、私がただ講義を進めるだけでなく、2日間のプログラムの最後にちょっと聞いてみたくなりました。

「どんな伝え方をしてくる商品だったら、あなた個人はその商品を推しますか」

つまり、「推しとする前提」を訪ねてみたくなったんです。

こう尋ねたくなったのには、もうひとつ理由がありました。Z世代という言葉はここ数年、いろいろな場面で耳にしますけれど、Z世代の定義を確認すると「現在の12歳から28歳くらいにあたる世代」という説明が多い。冷静に考えてみると、けっこうな年齢幅です。

デジタルネイティブの世代という点では、このように括ってもいいのでしょうが、10歳以上の違いというのはどれくらいのものかと考えてみたら、たとえばバブル世代と元祖アラサー世代の年齢差がほぼそうです。バブル世代が「周囲との関係性に過剰なまでに敏感」とするなら、アラサーと初めて呼ばれた時代に30歳を迎えた世代は「就職氷河期に直面して、それこそ周囲の価値観に振り回されることを否定する」世代のはしりとみることもできます。10歳の差って、これほどまでに違ったりするものです。


だから、商品選択のうえでの「推しの前提」を、Z世代の「下の年齢層のほう」である高校生たちに聞いてみたくなりました。Z世代とひと括りにせずに尋ねてみたら、現在の20代の人たちとはまた違う意識を持っているかもしれない、と…。


で、結果はどうだったか。

今回尋ねた相手は秋田在住の20人弱という話ですから、その結果がすべてとは当然いえないことは間違いありませんが、私にすれば「意外にも」とも「やっぱりそうか」とも感じられるような答えが返ってきました。

20人弱の言葉をまとめますと、
「端的なフレーズが欲しくて(動画と限らない、テキストでもいいらしい)」
「影響力の高い人が発信する方法には振り向き」
「SNSだけでなく、ときには紙媒体にも目を通すこともある」


そんなに突飛な答えが必ずしも出てこなかったのが、私にはむしろ面白かった。情報を取りにいく媒体は以前と大きく異なり、その情報が発信される形態も変わっていますが、なんらかの情報に影響を受けるという部分そのものにおいては変わらないのかもしれません。

過去の世代になかったようなきわめて自律的な購買判断(企業だけでなくインフルエンサーからもたらされる情報を含め、実はさほどの信頼は寄せない、など)をとるのかと期待していましたが、今回の秋田での話に限っていえばですけれど、そこまでではなかった印象でした。ここは今後、首都圏の高校生なども対象にして、より精緻な調査を試みたいところではあります。そう考えるヒントをもらえたことも、ひとつの収穫です。


おとなである私としては、浮き足立つことなく、そのあたりを冷静に捉えながら、若年層向けのプロモーションを考えていかないと、かえって空回りするかもなあ…と感じた、そんな出張での一場面でした。

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