- ホーム
- 賢い社長の「経理財務の見どころ・勘どころ・ツッコミどころ」
- 第13回 変わる「働き方」を活用してオフィス経費を削減する
新型コロナウイルスの感染拡大が、「働き方」を大きく変えています。
緊急事態宣言時における一時的なものと考えられていたテレワークや在宅勤務が、日本中で定着し始めています。
これまでは、従業員、スタッフは毎朝出勤して会社で仕事するのが当たり前でした。
ですが、できるだけ在宅での仕事を推奨する会社も増えています。
出勤しなければできない仕事はもちろんあります。
しかし、経理、総務、人事などの管理部門や、営業事務などのパソコンによるデスクワーク中心の仕事は、テレワークと在宅勤務が可能です。
いわゆるホワイトカラーの働き方が変わり、働く場所や時間が変わります。
そうなると当然、オフィスのあり方と経費も変わってきます。
そこで今回は、これからの会社のオフィス改革を想定して、今後のオフィス経費の削減について考えてみましょう。
御社では、どの仕事をテレワーク・在宅勤務に移行しますか?
●変わる「働き方」で、オフィスからなくなるモノと減るコスト
テレワークと在宅勤務を導入すると、オフィスは「社員がいる」から「社員がいない」に変わります。
さらに、オフィスは仕事をするために必要なモノが減ります。
人とモノが減ると、事務所スペースが少なくてすみます。
これまでのように、一人ひとりの固定席もいらなくなります。
出社した社員が席を自由に決めるフリーアドレスに変更した会社では、座席数が3分の2以下に減ったそうです。
固定席がないということは、デスクトップ型のパソコンも置けなくなります。
また、テレワーク・在宅勤務で仕事をするためには、紙の書類をデジタル化してネットワークで共有します。
紙で印刷しなければ、プリンターやコピー機の出番も減ります。
その結果、紙の書類を保管するキャビネットなども不要になります。
会議や打ち合わせもZoomなどのオンライン会議になるので、会議室さえいらなくなります。
会議スペースが減れば、パーティションも応接セットも、エアコンさえもお払い箱です。
テレワーク・在宅勤務が進めば、必要な机や椅子、書類棚の数は減少し、会議室も減るので、事務所を縮小して家賃を下げることが可能です。
事務所が狭くなれば、その分だけ光熱費や清掃代も節約できます。
社員が出勤しなくなれば、通勤費もいりません。
テレワーク・在宅勤務にすると、どのくらいコストが削減できますか?
●オフィス備品を減らして固定資産(償却資産)税を削減する
会社が資産を所有しているだけで、税金も負担しなければなりません。
オフィスにある備品のうち、原則として取得価額が10万円以上のものには、固定資産(償却資産)税が課税されます。
たとえば、パソコン、プリンター、コピー機、エアコン、パーティション、応接セットなどの備品が対象です。
実際に、オフィスにどれくらいの備品があるのかを確認してみましょう。
経理に指示して、固定資産台帳を出力してもらいます。
テレワーク環境を意識して、固定資産台帳を紙ではなく、試しにPCかタブレットで閲覧するようにします。
現在のオフィスの座席レイアウトと見比べながら、机や備品の数を確認します。
テレワーク・在宅勤務に移行した場合、オフィスの備品をどれくらい処分できるかを数えてみてください。
オフィスの備品が減ると、固定資産(償却資産)税が節税できます。
備品を処分したら、「減少資産」について申告します。
存在しなくなったものについて課税されたら、たまりません。
オフィス・スペースが縮小すると、処分するモノはどれくらいありますか?
●固定資産税の軽減の申請を忘れずに行う
令和3年度は、新型コロナウイルス感染拡大により収入が減少した中小企業は、固定資産税について軽減措置があります。
令和2年2月から10月までの間における任意の連続する3カ月の事業収入が、前年の同期間と比べて減少している場合、減少割合に応じて建物と設備の固定資産税が軽減されます。
・30%以上50%未満減少している場合、固定資産税2分の1免除
・50%以上減少している場合、 固定資産税の全額免除
固定資産税の軽減措置の適用を受ける場合は、償却資産の申告(令和3年2月1日期限)と一緒に、軽減措置の申請書を提出してください。
なお、この申請には税理士等の承認が必要ですので、詳しくは顧問税理士に相談してください。
御社は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で収入がダウンしていませんか?
●テレワークの導入には助成金の利用などを検討する
テレワーク・在宅勤務に切り替える場合、オフィスでの仕事環境を自宅などにも用意しなければなりません。
すると、不要になるモノが出る反面、新しく必要となる設備もあります。
デスクトップ型のパソコンの替わりに、ノート型のパソコンが必要なります。
テレワークに必要となる通信機器やネットワーク設備、それを運用するためのソフトウェアやセキュリティ対策は必須です。
社員によっては、自宅に仕事スペースが確保できるかどうかも考慮する必要があります。
このように、新たな費用が発生するため、資金的に余裕のない中小企業ではテレワークへの移行が進んでいないケースが多いようです。
そこで、テレワークの導入を促進するために、政府または地方自治体が、助成金や補助金の支給や、節税措置などで支援しています。
テレワークへ移行する場合には、事前に特例制度の利用を検討してみてください。
御社は、資金面でテレワークの導入をあきらめていませんか?
●中期的な視点で自社の事務管理体制を見直す
テレワーク・在宅勤務には、メリットもあればデメリットもあります。
中小企業の場合、すぐにテレワーク・在宅勤務に移行するのは難しいケースもあるでしょう。
それでも経営者としては、「テレワークは当分やらない」と決めつけるのではなく、この変化の時期に、自社の「働き方」を問い直してみることは大事です。
これからのオフィスのあり方や、事務管理の体制、そして事務管理にかかるコストをゼロから見直してみてください。
そして、今後のテレワーク・在宅勤務を想定して、オフィスがどのように変わるのかをレイアウトに書き込みながらイメージしていきます。
時代に合ったオフィス環境に変えていくために、今後、何を整理して、何を補強していくのかを、できるだけ中期的な視点で考えてみることが大切です。
3年後のオフィスのイメージを頭に描けていますか?
【参考文献】中小企業庁「新型コロナウイルス感染症の影響で事業収入が減少している中小企業者・小規模事業者に対して固定資産税・都市計画税の減免を行います」