menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

マネジメント

万物流転する世を生き抜く(7) カンネーの大敗北を乗り越えたローマの力

指導者たる者かくあるべし

 ローマとカルタゴ両軍はついに中部イタリアのカンネーの地で激突した。
 
 この一戦に形勢の逆転をかけたローマ軍が敷いた布陣は、相も変わらず中央に軽装歩兵とその背後に重装歩兵を縦に連ねる。
 
 歩兵兵力なら8万対4万、ローマ軍が圧倒していた。歩兵で一気に敵の中央を突破する戦術だった。
 
 ローマ軍は両翼に配置した騎兵の数と質は劣っていたが、総司令官のウァロは、騎兵が持ちこたえている間に勝負はつくと計算する。
 
 とっておきの精鋭1万を、とどめの要員として陣営に残す余裕を見せるほどだった。
 
 しかし、ハンニバルは新たな戦術で臨んだ。前衛の軽装歩兵を中央が出た「へ」の字の弓形に置いて敵の猛攻に時間を稼ぐ陣形を敷いた。
 
 軽装歩兵と重装歩兵が入り乱れて剣を振り上げ殺到するローマ軍は、押しに押したが、カルタゴの軽装歩兵がカーテンを開くように左右に別れて側面に回り込み、疲れ切ったローマ歩兵の正面に新手の重装歩兵が壁となって立ちはだかる。
 
 左右両翼の騎兵戦でローマ騎兵が総崩れになるころには、歩兵七万は完全に包囲され、玉砕した。
 
 戦死7万、出動することなく陣営に残った精鋭1万は捕虜となる。これほどの惨敗はローマ史上、先にも後にもない。
 
 それでもローマはくじけない。なんとかローマに帰還したウァロを市民たちは歓呼で迎えて敢闘を讃え、かえって戦意は高まった。
 
 ローマ軍の強さは、貴族層から平民まで、市民の義務として兵役につくことにある。だれもが自分のこととして戦いに赴く。
 
 カンネーの戦場でも、共和制の中核である元老院議員たち80人が兵士として命を落としている。
 
 敗戦の責任は市民全員にあると考えるから、敗軍の将を処刑することもない。敗戦から学んだ将にこそ次を期待し再び兵を預ける。処刑の対象は、敵前逃亡と命令違反だけなのだ。
 
 戦いであれ経営であれ、トップが安全な銃後で命令だけ出し、責任は現場にとらせて次々と首をすげ替える組織は多い。
 
 そんな組織が“戦い”にいかに弱いかは、現代でも同じことである。
 
 かたやカルタゴ軍。ハンニバル個人の軍事的天才にその強さを負う。兵は基本的に傭兵である。戦いにかける義務感と決意に劣る。
 
 だれよりその弱点を知るハンニバルは、大勝利の後、南イタリアに籠もって各都市の攻略を続け、粘り強くローマ連合の瓦解を目指す戦略を継続する。  (この項、次週へ続く)
 
 
 ※参考文献
 
 『ローマ建国以来の歴史5』リウィウス著  安井萠訳 京都大学学術出版会
 『歴史1』ポリュビオス著 城江良和訳 京都大学学術出版会
 『ハンニバル 地中海世界の覇権をかけて』長谷川博隆著 講談社学術文庫
 『ローマ人の物語Ⅱ ハンニバル戦記』塩野七生著 新潮社
 
 
 
  ※当連載のご感想・ご意見はこちらへ↓
  著者/宇惠一郎 ueichi@nifty.com 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

万物流転する世を生き抜く(6) 敗戦に学ばぬローマ軍前のページ

万物流転する世を生き抜く(8) スキピオ立ち上がる次のページ

関連記事

  1. 情報を制するものが勝利を手にする(5)
    時代の変化を読む力とイノベーション

  2. 日本的組織管理(9) 超二流人材を戦力に育てろ

  3. ナンバー2の心得(11) 造反のタイミング

最新の経営コラム

  1. 第169回 「達人に学ぶ①アパホテル 元谷拓さん」

  2. 第4講 まず、担当者がお客様との正しい関係に合った対応をすること!

  3. 第19回 成長するフィンテック企業の戦略 ~ クラウドファンディング Makuake ~

アクセスランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. 戦略・戦術

    第261号 自社サイトで安心・簡単を提供する ID決済サービス
  2. マネジメント

    決断と実行(11)日本海海戦
  3. 戦略・戦術

    第47回 「今、良い企業は何に力を入れているのか?~ヨーロッパ視察編~」
  4. 後継者

    第18回 一族という意識
  5. 仕事術

    第58回 大IoT時代に先手?ソフトバンクがARM社を買収する真の狙いとは?
keyboard_arrow_up