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戦略・戦術

第九話 崖っぷちの下請け町工場_家具職人のチャレンジ

中小企業の「1位づくり」戦略

こんにちは!
1位づくり戦略コンサルタント
佐藤元相です。
 
今日のテーマは
崖っぷちの下請け町工場_家具職人のチャレンジ
です。
 
岐阜県山県市にF-FURNITUREというブランドの
オーダーキッチンメーカーがあります。
 
創業は1932年、従業員数は10名で
会社名は藤岡木工所といいます。
 
藤岡功社長は3代目。
「祖父と父は伝統的な加工技術を活かして
建具屋をしていました。私が天然木にこだわった
オーダーキッチンを創り始めました」
 
 
 
F-FURNITUREは家具職人がつくるキッチンメーカーで
熟練の家具職人が創り出すフォルムやデザインは、
建築家をはじめ業界雑誌などから高い信頼を集めています。
 
特に天然木にこだわり、素材の特性を最大限に活かした
北欧風のデザインは独自の世界観があります。
家具やインテリアなど、暮らしこだわりをもつ若い夫婦に
とても人気があり業績を伸ばしています。
 
 
しかし順風満帆でここまでこられたのではありません。
2010年までは、大手建設会社の100%下請けで
マンション据え付け家具を製作していました。
 
2009年のリーマンショックのときは、
受注が激減して窮地に追い込まれています。
藤岡社長が当時のことを振り返り話しをしてくれました。
 
 
 
「取引先の会合に参加したときのことでした。
親会社である大手建設会社の専務から
『このままうちの仕事だけを請け負っていたら
あんたの会社はじり貧でやっていけなくなるで』と
真顔で言われたのです。
その言葉を聞いて『うちはメーカーにならにゃいかん!』
と下請け仕事から脱却する覚悟を決めました」
 
 
 
しかし、何をどのように取り組めばいいのか?
藤岡社長には全く見えていませんでした。
 
藤岡木工所に限らずこれまでに相談のあった
下請け加工会社の場合、ひたすら口を開けて受注を
待つ工場が多く、販売戦略という概念を持った社長は
ほとんどお会いする機会がありませんでした。
 
 
 
このまま新たに何かを始めるにも
現在の延長線上に未来を描くにも限界があると
藤岡社長は考え、ランチェスター弱者の戦略を学び
新事業に取り組むこととなりました。
 
下請けをしていた藤岡木工所の戦略をまとめてみした。
 
客層:大手建設会社
商品:マンション据え付け家具の製造施工
地域:注文があればどこでも
 
知識が未来を創る!
 
 
 
ランチェスター弱者の戦略には、
「競争条件に恵まれない会社が、条件に恵まれた強者の
会社と同じやり方で経営を進めるのは賢明ではない。
 
弱者は強者と違ったやり方で差別化しなければならない。
 
資源には限りがある。
自社の得意な範囲を細分化して検討し、
特定分野に集中的に力を投入する。
勝機がつかめる優位な所はどこかを見つけ
目標を定める」とあります。
 
 
 
得意な分野を細分化して集中する!
 
そこで藤岡社長はこれまでの実績から
得意分野であるキッチン製造に集中することを
決めました。
 
キャッチフレーズは
「家具職人がつくるオーダーキッチン」
です。
 
ichi9.png
 
顧客は暮らしにこだわりを持つ若い夫婦であり、
また、理想の暮らしを探究している設計事務所と
定めました。
 
 
お客視点から発想する
きっかけは、ある設計事務所の社長が藤岡木工所に
やってきて、たまたま展示していた天然木で造った
キッチンを観て「このアールがいい。木の優しさを
感じるデザインだ。スゴい職人技ですね」と
話してくれ受注に繋がったことでした。
 
 
 
藤岡社長は「うちには言葉にできない技術がある。
最新鋭の設備を持っている会社よりも
長年培ってきた技術とノウハウが蓄積されている。
そして熟練職人の技がある。これがうちの強みだ」と
この体験から強い可能性を感じたといいます。
 
 
 
オーダーキッチンと熟練職人の技、
さらに天然木でつくる本格的なモノづくりを
体感してもらえれば受注の機会が増えるかもしれない。
 
藤岡社長は顧客づくりの仮説からイベントの
企画を立てました。
 
 
 
藤岡木工所の新3大戦略をまとめてみました。
客層:顧客は暮らしにこだわりを持つ若い夫婦であり、
また、理想の暮らしを探究している設計事務所
商品:天然木でつくるオーダーキッチン
地域:岐阜中心に車で1時間以内
 
 
体験型木工ワークショップ
実際には「うちは職人ばかりで営業の経験もありません。
売り込むのも苦手意識があり自分がやってみようとも
思えません。お客さまから声を掛けてもらえるような
環境をつくることができればいいなぁ」という理由から
イベントが最適だと考えたと言います。
 
最初の体験型木工イベント
ワークショップが開催されました。
 
「天然木でお盆をつくる」
これが当たった!
 
インターネットの募集ページをオープンすると
定員の3倍の申し込みがあり、あっという間に
締め切りとなりました。
 
 
 
参加者は自分らしいライフスタイルを望んでいる方や
センスよく暮らしたいと思っている方、
地元の設計事務所や工務店経営者の方が集まりました。
大盛況のイベントとなりました。
 
この取り組みを始めて3年後、
藤岡木工所の業績は過去最高となり
下請け比率と元請け比率は完全に逆転しました。
 
 
 
さてどのようにしてワークショップへの集客に成功したのか?
大変興味がありますね。
 
またワークショップを活用しどのように事業展開していったのか?
も興味深いと思います。
 
これらについては、次号で詳しく案内します。
お楽しみに。
 
 
 
さぁ今日はここまで!
 
 
私の経験や知識、考えが、
あなたの人生に少しでも
影響を与えることがあるのであれば
これほど嬉しいことはありません。
 
 
本日も、お付き合いくださり
ありがとうございます。

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