10年間で総額1兆円分の公共事業の改善をすすめ、コスト縮減2000億を達成。多くの企業で経営改善を指導しテレビ番組「情熱大陸」でも取り上げられた改善士 横田尚哉氏に今回のコロナ禍とデジタル化で経営環境が大きく変化した時代の経営改善についてお聞きしました。
■横田 尚哉(よこた ひさや)氏
GE(ゼネラル・エレクトリック)の改善手法をアレンジして10年間で総額1兆円分の公共事業の改善に乗り出し、コスト縮減総額2000億円を実現させた実績を持つ業界屈指のコンサルタント。「誰のため、何のため」をもとに、ダイナミックな問題解決手法を駆使し短期間で数億円から数十億円の工事費を浮かせる実績が評判を呼ぶ。氏の改善手法は業種や規模を問わず、コスト削減はもちろん、品質向上や業務効率化、新事業開発、企業変革にも応用でき、コンサルティングサービスは半年待ち。
著書に『ワンランク上の問題解決の技術《実践編》視点を変える「ファンクショナル・アプローチ」のすすめ』(ディスカバー)、『問題解決のためのファンクショナル・アプローチ入門』(ディスカバー)、『ビジネススキル・イノベーション』(プレジデント)、 『第三世代の経営力』 (致知出版社)、『問題解決で面白いほど仕事がはかどる本』 (あさ出版)等多数。
リーダーが見るべき4つの変化
Q:今回のコロナ禍とデジタル化により、経営環境が大きく変化しています。リーダーとしてどのような「変化」を見るべきでしょうか?
これは、やはり世の中の変化です。世の中の変化を見るには4つあります。まず、自分の会社がどう変化しているかということ。そして、お客さまがどう変化しているか。3つ目は、社会の影響。そして最後は市場の変化。この4つの変化をみるべきです。では、その4つの変化をリーダーはどう捉え、どう見ればいいのか。
こういったところで、ぜひ注目していただきたいのは、世の中のニュースだとか、話題だとかありますね。何か新しい技術が出たとか、政治家による何か政策が発表された、あの映画が流行ったとか。そういった現象ですね。ニュースやネットを見ていると現象が起こっているなぐらいは捉えられます。問題は、その時にお客さまがどのように反応しているかというところを注目してほしいんですね。お客さまがその現象に対し、どんな反応を示しているか。ここにビジネスのヒントがあります。リーダーはそれを捉えてほしいということです。何かが流行った時にお客さまに注目してほしい。もちろん自分自身も話題になっているところを見たい。見てもいいのですが、お客さま側の視点をよく観察してほしい。どんな反応しているか。そこに次の時代のヒントがあるのです。
経営を改善し儲かるように進化する
Q:時代や市場にあわせて「経営のやり方」を変えていくことが必要と言われます。変化の時代の経営はどうあるべきでしょうか?
変化の時代というのは、常に変わっているわけで、過去のやり方は通用しない。過去を見ていると道を間違えてしまうからです。今、世代が変わっています。経営には世代があります。第1世代、第2世代、第3世代。そして今は第4世代です。
この第4世代に第3世代のやり方は通用しませんよということです。第4世代というのはどういうものかというと連携の時代なんですね。そして、信頼と切り替えが必要。しっかりと、目的・手段を捉えていく。それが必要な時代です。
多くの企業は変化の時代に自社の扱える技術をほかに生かせないだろうかと考えて、新しい道、新しい道を考えていって生き残っています。時代に合わせて、やっぱり切り替えられる会社が生き残っていくということです。だから、変化の時代の経営のキーワードは経営を改善し進化するということです。
お客さまは何にお金を払っているか
Q:横田先生は経営改善する時に「ファンクショナル・アプローチ」という手法を使われています。これはどのようなものでしょうか?
ファンクショナル・アプローチというのは、知識から知恵を生み出す思考システムです。私たちは、色んな情報が取れて、どうしても知識過多になってしまいます。その情報の多くは手軽に入手が可能。むしろ、情報に埋もれてしまうぐらいでしょうか。問題は、この知識を知恵に変えていくかというところが重要です。その時に役立つのがファンクショナルアプローチです。ファンクショナル・アプローチを使って、今まで得た知識を知恵に変えていただきたい。知恵を生み出す思考システムだということです。
お客さまは何にお金を払っているのか。これをファンクショナル・アプローチでしっかりと捉えるということです。
例えば、ホームセンターの経営をしているとして、お客さまが自分のお店に来てくれた。それは何かを達成するために来ている。それを「ファンクション」と言います。
そのファンクションというものが何なのか。例えばドリルを買いにきたお客さんを考えて見ると、お客さんはドリルを買いに来たのではないということです。8ミリの穴が欲しい。そのために穴を開ける道具を買いに来たんだと捉えるということです。そうすることによって、ビジネスはただ形を追いかけるのではなく、ファンクションを捉える形になります。
ファンクショナル・アプローチを使いますと先入観、固定観念が取り除けます。私たちは生きていく上で先入観、固定観念というのを使います。特に、固定観念というものは大切で、その都度、判断しなくて済みます。過去の経験を使って次の行動を考えずにでき、判断がスピーディーになります。
ただ、それは現象と行動が同じ場合は固定観念でいいのですが、新しく生み出したい、進化させたい、他にないものをつくりたい。こういう時には、固定観念が邪魔になるのです。
ファンクショナル・アプローチによって、その固定観念というのを取り除くことができます。それができると理想の姿が見えてきます。あるべき姿が見えてきます。今まで見えてこなかったことが見えてくるんですね。変化の時代には今までにない発想がリーダーに求められています。
誰のため、何のためで始まる
Q:これからの時代に「儲かる会社」にしていくためには何から始めればよろしいでしょうか?
ぜひ、すべての経営者にお伝えしたいところですけれど。「誰のため、何のため」から始めてください。今やられているビジネス。今やられている活動。今やっている作業。すべてに誰のためか、何のためかと問いかけてください。何もかもここから始まります。そして、答えをちょっと出してほしい。その出した答えに違和感を感じたら、これは進化するチャンス、改善するチャンスだということです。違和感を感じたら、もうそれは今の時代にはふさわしくないものです。
儲かる会社や変化に耐え抜いてきた会社は必ず一定の法則を知っているということです。この法則をしっかり知って、会社をイノベーションしていただきたいと思います。進化した会社が生き残る。イノベーションは必ず起こせるということです。ぜひ、「儲かる会社をつくる技法」講話を聞いていただいて、皆さんの会社をもっと発展していただきたいと思います。