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- 第42回 社員の幸せを考えるブレない経営とは?~事例:アシックス~
~経営理念のフィロソフィーが会社を生き残りへと導いた!!~
成長の軸足を海外に置き、欧米メジャー企業であるナイキやアディダスへ挑んでいる日本企業があります。
その名は、アシックス、創業は1949年。
同社は同族企業ではなく、1977年にオニツカ株式会社と株式会社ジィティオとジェレンク株式会社三社が合併し設立されました。
アシックスが少子高齢化という変化に対応し、今や海外の売上が今や8割を越えるまでに成長できたのは、同社の会長を努めていたオニツカ氏の創業時の経営理念が会社を原点回帰させ、スポーツシューズに焦点を絞る経営へと導いたからなのです。
<アシックス経営理念ASICS SPIRIT>
・フィロソフィー(創業哲学)ー
「健全な身体に健全な精神があれかし−“ANIMA SANA IN CORPORE SANO”」
*社名の由来となった「("Anima Sana in Corpore Sano")もし神に祈るならば、健全な身体に健全な精神があれかしと祈るべきだ」という帝政ローマ時代の風刺作家ユベナリスの言葉は、創業者鬼塚喜八郎の戦友で当時、兵庫県教育委員会保健体育課長の堀公平氏が、事業について相談を受けたときに例えに出した言葉で、この言葉に鬼塚喜八郎は感銘を受け、スポーツによる健全な青少年の育成を目的に、本格的にスポーツシューズを作る動機付けとなった。
~経営理念を言い換えれば、現場は一つになる!!~
今でこそ同社の主力商品はランニングシューズです。
が、1990年代後半にはバブル崩壊の影響で、売上を牽引してきたスキー・用品やレジャー部門の収益が急速に悪化し、同時に競技用商品開発にこだわってしまうことでデザイン性がなくなり、スポーツブランドをファッションの一部にする消費者の対応に遅れてしまいました。
その結果、98年度にはアシックスに「倒産」の二文字が現実となってきます。
同社社長の尾山氏は、その時創業者オニツカ(鬼塚喜八郎)氏が「スポーツシューズ」を全くの素人であるにも関わらず作った原点(先述)を思い出し、“現場はスポーツマンたれ!”と以下のように理念ASICS SPIRITをバリューに言い換え、現場自身がスポーツをする同志たれ!と具体化する形で、行動指針を制定。
ランニングシューズに経営資源を集中する戦略は、行動指針実践により現場が一つとなり、顧客の支持を勝ち取ります。
・バリュー=行動指針
第1条:スポーツマン(現場)はルールを守る
第2条:スポーツマン(現場)はフェアプレーの精神に徹する
第3条:スポーツマン(現場)は絶えずベストを尽くす
第4条:スポーツマン(現場)はチームの勝利のために闘う
第5条:スポーツマン(現場)は能力を高めるために常に鍛錬する
第6条:スポーツマン(現場)は、「ころんだら、起きればよい。失敗しても成功するまでやればよい。」
~会社の目的=理念実現がブランドを構築する!!~
2000年ごろからの健康志向の高まりはランニングブームを起こし、次第に消費者は全てを自社で生産するアシックスのランニングシューズの細部にこだわった商品力に魅了されるようになります。
次第に同社の商品力は、ランキング下位のプロやトップアマの選手たちから「どこに行けば買えるのか?」という欧州の同社拠点への問い合わせとなり、アシックスの「製品にかたらせる」という他のブランドと一線を画する戦略は同社をオンリーワンのブランドへと成長していく推進力となりました。
アシックスは、多額の契約金でビッグネームを看板として売上を獲得するナイキやアディダスではなく、現場がスポーツマンたる精神で理念に沿って日々のこだわりをバリューとして実践することで、商品力に魅せられたトップアスリートをファンとして囲い込み、彼らをブランドの顔として育て、世界に君臨する2社ナイキ・アディダスへ挑戦しようとしています。
なぜなら、アシックスのブランドは創業の精神により作られた創業哲学(会社の存在意義)である「健全な身体に健全な精神があれかし−“ANIMA SANA IN CORPORE SANO”」を実践し、経営理念を実現することで確立できるからなのです。
アシックスHP<ASICS SPIRITページ>