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税務・会計

第48号 在庫不正

会社を守り抜くための緊急対策

 在庫を調整することで、資産や利益は変わってきます。ただ、変わらないのはキャッシュなのです。在庫を水増しして利益を増加しても、資金には無関係ですから、利益増加=資金増加にはなりません。
 この点が分かれば、在庫不正は簡単に発見できます。

 前回にもお話ししましたが、売上原価の計算式は、期首在庫+当期仕入高-期末在庫ですので期末在庫を増加させればそれと同額の売上原価を減少(利益を増加)させることができ、利益に最も直接的に影響を与えることができます。    
 在庫の調整には、「架空在庫の計上」「実在庫の過大計上」「評価損の未計上」などがあります。
 評価損とは、販売見込みがないか、若しくは購入金額では販売できない場合は、時価まで評価を減額する必要があります。これをしなければ、表面上は、利益は多く計上することが出来ます。
 手口が単純なため担当者レベルで行われることが多いと思われがちですが、実は経営者の巨額不正の手口でも利用されている事例が多数あります。
 たとえば複雑なスキームを駆使したことで知られている巨額の不正会計事例において、棚卸資産の数量と単価の操作による水増しや架空計上、陳腐化棚卸資産の評価損を計上しない等の手口が含まれていました。
 棚卸資産の操作は不正において常套手段なのです。

 棚卸資産の会計不正はどのように見つけ出せばいいのでしょうか。
 手口が単純であることが多いため、やはり基本に立ち返り、以下の手続きが効果的です。

 A)棚卸資産の現物確認
 架空に計上された棚卸資産を発見するには、実地棚卸手続により直接、現物を確認することがもっとも一般的でかつ、効果的です。
 しかし、在庫証明書の偽造等による虚偽または架空在庫、遠隔地倉庫での保管による現物確認の回避など、会計不正の実行者は様々な策や口実を講じることによって、不正の兆候をキャッチできないようにします。
 特に水産加工などは、マグロのような高級魚はマイナス60度の冷凍庫で保管されるため、現物確認をするにはあまりにも寒い(実際は痛い)ため、凍え死んでしまいます。ですから、まともに在庫確認は出来ません。
 だからでしょう。水産加工業者の在庫不正はあとを立ちません。
 現物を確認することができたとしても、仕掛品や未成工事支出金などは現物を見ただけでは金額の妥当性を判断することが困難です。
 このことを悪用して水増しが行われることがありますので現物を確認するだけでは不十分です。

 B)期間比較、売上高等との分析検証
 前にもお話しましたが、基本は、毎月のバランスシート残高の推移表を作成して、異常な増加減少がないか事前に確認することがとても有効なのです。
 もちろん、毎月、棚卸をしていない会社も多々ありますので、その場合は、売上高、売上債権の増減、仕入高、仕入債務の増減の異常値で代用することは十分可能です。なお、売上高と棚卸資産の関係は回転期間(棚卸資産の在庫期間)として計算されますので、これにより趨勢と期間自体の妥当性を検証することもあります。
 売上高の増加より棚卸資産の増加の方が顕著な場合は粉飾の可能性が高まります。

 【売上原価の在庫付替え、未計上の事例】
 設備関連事業会社は、受注した一部の工事物件において、実在する売上や仕入の原始証憑の日付・物件名を操作・改変して、売上・仕入(原価)を本来計上しなければならない年度から前倒しするなどの手口で過去5事業年度にわたって過大な利益を計上していました。
 具体的には
 (1)物件の原価を翌期以降の他の工事物件の原価として付け替える方法により原価の計上を先送りする。
 (2)引渡し前の物件について、原始証憑の日付を改変して売上を前倒し計上するが、原価の計上をしないといった方法によるものでそれぞれが単独あるいは組み合わせて用いられていたりして過大な利益が計上されていた。

 収益と費用は、その発生した期間に適正に計上しなければならないという大原則(費用収益対応の原則)があります。
 費用は収益を獲得する為の犠牲ですから、収益があれば、必ず同じ期間に費用が発生していなければなりません。
 この収益と費用の計上時期を意図的にずらすことによって、いとも簡単に、利益操作は出来てしまいますし、長い目で見れば結局はおなじことだという思いがあるため、罪悪感はありません。

 【架空の棚卸資産の計上事例】
 物品販売業者の管理担当取締役が、業績予想として発表した利益額を確保するため、経理担当社員に在庫の調整、証憑改ざんを指示。
 面子を重んじる役員の場合に、良くあるケースです。たかが、予想とはいえ、やはり、面子が許せない人もいるのです。

 具体的な手口は
 (1)棚卸を行う場合に、数量を記入する「棚卸原票」の未使用ページに実在しない在庫数量を記載し、在庫数量を増加させる。
 (2)単価の安い倉庫にある在庫を、単価の高い店舗在庫として計上し、評価額を増額するといった方法に加え、一部の在庫には適正な社内手続を経ずにその評価額を増額する方法。

 

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第47号 在庫増加は利益増、しかし資金減前のページ

第49号 業務上横領次のページ

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