前回、「対外試合をしよう」についてお話しました。今回は「当たり前が誰にでも出来る組織をつくる」についてお話します。
まず、「当たり前」から検討しましょう。「当たり前」ってどういう意味だと思いますか?辞書によると「当たり前」には二通りの意味があります。一つ目は、「そうあるべきこと・そうすべきこと・またそのさま。」二つ目は、「普通のこと・ありふれていること・またそのさま。」です。今回お伝えしたい「当たり前」は、勿論一つ目の意味です。「当たり前が誰にでも出来る組織をつくる」は、さらっと読めますが実は大変難しいことです。何故なら、そうすべきことを一人の例外もなく、会社の全員ができる組織を作るということだからです。
「会社の全員が出来る組織」にするために、皆さんは何から始めたらよいと思いますか?いくつかご意見が出ると思いますが、私は会社側と社員側の向かう方向が合致する「会社の理念」と考えます。会社は理念を目標に動いていますから、何を・何処を目指しているのか、事あるごとに理念を伝え続ける熱意が必要です。理念で構築された組織であれば、するべきことの課題も立てやすく、課題の実践についても案が出しやすくなり、一人一人の抱くモチベーションも間違えにくくなります。もちろん振り返りや軌道修正は、実行の過程で頻繁に行うことが必要です。
少し横道にそれますが、ビジネスマナー研修インストラクターの立場として、現在2点感じでいることがあります。
1. コロナ禍の対応として、三蜜を避けたりマスクを常用したり、会話を避けるなどの期間の長さで、今まで築いてきたお客様との距離に支障が出ている
2. 研修のご依頼内容としてクレーム研修が増えてきている
です。コロナ禍で、社員研修を自粛なさった企業様も実際ありました。特に「1」の対応として、コロナの終息を見越して社員研修の項目の振り返り(自社はどこが出来ていて、何が出来ていないか)をなさる良い機会です。
このとき、何と照らし合わせれば良いかというと、研修の項目それ自体の振り返りは勿論ですが、私は前述したように「会社の理念」を挙げます。「理念」を対象にすることで、「理念」の再理解にも繋がります。さらにお願いをしたいのは、振り返りとして○○ができていないと判断なさったら、そのトレーニングには無理を承知で申し上げますが、“時間をかけて”ください。コロナ終息後では、時間を取るのはなかなか難しいと想像できます。今のうちにトレーニングを始めるのはいかがでしょうか。是非“身体が覚える”までトレーニングを繰り返しお願いします。
私事で恐縮ですが、かつて客室乗務員として訓練を受けたときの体験を二例お伝えします。
まず、お辞儀の仕方の訓練では、講義のあと全身が映る鏡を前にして、何回も何回も何回もトレーニングを「させられ」ました。「させられた」と表現したのは、自分の未熟さで教官の意図が分かりきれなかったのです。お辞儀の仕方が様になったと判断した時は、教官にとって私たちがスタート地点に立てたという通過点に過ぎず、そこから「無意識でも綺麗なお辞儀が出来る」をゴールとして訓練を繰り返していたのです。恥ずかしながら私がそれをはっきり理解出来たのは、一人前として乗務してからでした。
もう一つの例は、離陸直後のお客様に向けたご挨拶のアナウンスの仕方です。座学で学んだ後、お辞儀同様何回も何回も何回もトレーニング「させられ」ました。自分なりに教官のアドバイスを受けて頑張りましたが、ダメ出しの連続でした。足踏み状態を救ってくれたのは、当時好意を寄せ始めた人でした。その人に話しかけるつもりで「皆様、ご搭乗ありがとうございます~~」を言い終えたとき、教官の「OK!」が聞こえました。教官は私の心模様の数ミリの違いが音声表現の違い数ミリになって表れたのを聞き逃さなかったのだと思います。(その直後「はい、今のが“まぐれ”でない証拠にもう一回」と念押しが入りましたが)
もしお読みいただいている方が社員研修を見直す立場の方でしたら、再教育に際しては、コロナ禍以前より会社のゴールを一段高くなさってください。そして“お客様に喜んでいただく”というゴールを目指して指導されることを、心から望んでおります。
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