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人事・労務

第34話 将来の最低賃金の引き上げにいかに対応すべきか

賃金決定の定石

最低賃金は今後どうなる?

 政府は、当面の最低賃金の目標を全国加重平均1,000円としてきました。今後について岸田首相は、8月末の「新しい資本主義実現会議」の中で「最低賃金の全国平均額を30年代半ばまでに1,500円とする」との目標を示しました。仮に2035年に1,500円とするためには、毎年40円前後の引き上げを今後12年間継続して行っていかなければならないこととなります。最低賃金水準付近の従業員については、毎年月額で7,000円、12年間で月額84,000円以上の引上げ額となる計算です。月の所定労働時間が168時間の場合、最低賃金水準でも月額252,000円に達します。現在、大手金融機関が提示している新規学卒者(大卒)初任給並みですね。


 このように考えると、とてつもない引上げ額になるように思われますが、最低賃金1,500円という水準は、現時点でのイギリスやフランスの最低賃金よりなお低い水準なのです。最低賃金が2,000円を超えているオーストラリアなどと比べると更にその低さが際立ってしまいます。


 2014年より「官製春闘」と呼ばれる政府主導の賃上げ要請が始まり、最低賃金引上げも3%程度の引上げが続いてきました。2013年の最低賃金は764円でしたから、この10年間で最低賃金は240円、1か月168時間換算で40,320円アップしました。そしてこれからの12年間で、この2倍以上にあたる1カ月84,000円程度が更に引き上げられると予想されるのです。


 飲食サービス業や宿泊業、小売業などの中には最低賃金近辺の賃金水準で働いている従業員が数多くいらっしゃいます。わが国では最低賃金の引き上げが話題になる割には、最低賃金付近で働いている労働者数やその属性を調べた公的な統計資料がないのですが、最低賃金付近で働く人は割合が確実に増えていることは事実と言えましょう。最低賃金付近の方の給与を、その年の最低賃金に合わせて引上げなければならないのは勿論ですが、「ベテラン社員や上位者の社員の給与までは引き上げる余裕がない」という会社も多いので、最低賃金が引き上げられるたびに、自ずと最低賃金付近の従業員数が増えていってしまうのです。


 この先の10年、15年の賃金戦略を考えるとき、最低賃金の引上げへの個々の企業対応は、単なる総額人件費の問題を超えて、事業構造の再構築をも視野に入れた長期的な人事戦略が必要になるといえるでしょう。


 「既存事業の生産性を向上させて、一人当たり付加価値生産を向上させる。」「新規事業への展開を通じて、生産性向上を図る。」「DXなど設備投資を通じてより、少ない人員でも従来以上の生産性を確保する。」など、それぞれの会社に合った中長期的な戦略が求められています。

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