来店するのは何のため?
分析の結果、いくつかの重要なメカニズムが見えてきました。現行の集客方法は、《商品の質を高め》たり《商品を変え》たりして、同時にその《商品内容を伝える》手法でした。それらの達成度を高めるコトで、《来店動機を作る》効用を実現し、集客につなげようとしていました。
そこで私は、このように問いかけました。「お客さんは、〝本当は何のため〟に来店しているのでしょうか?」「お客さんが、〝本心から達成したい〟と思っている目的は何でしょうか?」と。
そうすると、メンバーの意識が変わりました。これまで行ってきたのは、自分たちのための集客だったことに気が付いたようです。そもそも集客とは、お客さんの目線で考えるべきだということを思い出されました。そこで、お客さんの立場に立って考えてもらいました。そうすると、集客方法として不足していたところが見えてきたのです。
お客さんは、商品を注文して、その場で飲食するためだけに、来店しているのではないことに気が付きました。店内で同行者やスタッフとの《会話を交わす》コトで、《人とのつながりを感じる》効用を達成するためでもあったのです。それは、お客さんといつも会話しているスタッフの感覚でした。
お客さんにとっては、コロナ対応で人との会話や対面機会が減っていたことで、《会話を交わす》欲求が増していたのです。つまり、スタッフとのコミュニケーションを求めていたということです。改善するべきなのは、商品や設備ではなく、人材だったということに、スタッフ自身が、気がついたのです。
自動で集客できる店舗に
そこからは、一気に改善が進みました。集客のメカニズムが明確になったからです。どこを改善するべきなのか、何を強化するべきなのかが、メンバー全員が理解しています。いろんなアイデアがたくさん出され、次々と具体化されていきました。
最終的にそのお店は、お客さんと多くの会話が生まれるような仕掛けをつくり、店員とのつながりを強めていくことができました。常連客が増え、その常連客が新規顧客を連れてくるという好循環をつくることができました。集客の自動化が実現できたのです。
この一連の作業にかかった時間は、たった4日間です。僅かなリソースを確保して、効率よく改善できる手法を用いれば、《顧客のニーズを捉える》コトができ、《対応速度を上げる》コトができるのです。この積み重ねにより、業務のムダが取り除かれていき、《利益を最大化する》コトができるようになるのです。
■横田尚哉(よこた ひさや)氏/ファンクショナル・アプローチ研究所 代表取締役社長
GE(ゼネラル・エレクトリック)の改善手法をアレンジして10年間で総額1兆円分の公共事業の改善に乗り出し、コスト縮減総額2000億円を実現させた実績を持つ業界屈指のコンサルタント。「誰のため、何のため」をもとに、ダイナミックな問題解決手法を駆使し短期間で数億円から数十億円の工事費を浮かせる実績が評判を呼ぶ。氏の改善手法は業種や規模を問わず、コスト削減はもちろん、品質向上や業務効率化、新事業開発、企業変革にも応用でき、コンサルティングサービスは半年待ち。
著書に『ワンランク上の問題解決の技術《実践編》視点を変える「ファンクショナル・アプローチ」のすすめ』(ディスカバー)、『問題解決のためのファンクショナル・アプローチ入門』(ディスカバー)、『ビジネススキル・イノベーション』(プレジデント)、 『第三世代の経営力』 (致知出版社)、『問題解決で面白いほど仕事がはかどる本』 (あさ出版)等多数。音声講話「儲かる会社をつくる技法」(日本経営合理化協会)、「業務の見える化」(日本経営合理化協会)も出講。
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