前回、「教える時に上手く相手に届くポイントの視覚情報『印象を高める表情』について」をお話しました。今回は、「視覚情報『組織人としての身だしなみ』と『魅せる所作』についてお話いたします。
『身だしなみ』
皆様は、「身だしなみ」と言う言葉を耳にしたら、瞬間どのようなことを感じますか?さらに身だしなみの上に「組織人としての」という言葉がついているのですから難しい質問と思われるかもしれません。これから申し上げる一つ一つの理由に納得なさっていただければ、スキルに置き換えられます。
先ず「身だしなみ」と「おしゃれ」の違いです。「身だしなみ」を考えるときの対象は、『相手への配慮』です。配慮という言葉が入っているのは、組織の印象をお伝えする皆さんが、組織に属する一人だからです。一方「おしゃれ」の対象は、「自分が楽しむ」ですから、オフの日の服装はそれぞれが十分お楽しみください。オフとオンの日のメリハリがついてよろしいでしょう。その差を最初にしっかりお伝えください。(勿論、職種によっては皆さんが「素敵」の広告塔になることも必要です)
「身だしなみ」には、1.清潔 2.T・P・O 3.控え目の三大原則があります。
1.は、全ての職業に該当します。ここで意識していただきたいのは、自分は清潔と思っても、相手にそのように見えなければ、あなたは「清潔」と感じていただけません。「整える」も意識します。
2.の「T」は「Time」=時間、「P」は「Place」=場所。そして「O」は「Occasion」で、装っていく場所にその服装が適しているかという意味です。
3.は、ここがポイントですが「控え目」です。お客様ファーストが重要です。「素敵」はお客様に譲ってさしあげましょう。身だしなみは組織が一体であることを示すものですから、おしゃれを持ち込むとマイナスになる可能性が大です。
① 髪型
【男性】職種にもよりますが、ワイシャツの後ろ襟に髪がかからない長さがお客様に「清潔」を伝える一番の対策です。寝ぐせによる髪の毛の乱れは女性より男性に多い気がします。合わせ鏡などを使ってのチエックは、数秒で出来ます。ぜひ心がけてください。
【女性】一言で言うと、前髪が眉を隠す位長いのはNG!その長さでお辞儀をすると、自分の顔の前で暖簾のように前髪が垂れて、顔を隠してしまいます。また、髪が肩より長ければ結びます。例えば、私は帝国ホテルの受付さんに、肩より長い髪をたらしたまま働いている方を見たことがありません。このとき使うゴムやシュシュは無地の黒・紺・茶などがよいです。
また午後になると遊び毛などが出やすくなり、第一印象に疲れを感じさせてしまいます。昼休みに結び直すか、ハードタイプのジェルなどで一日乱れない対策をお願いします。
② ユニフォームの着方
男性・女性ともに会社の方針に沿って装います。例えばワイシャツやブラウスの第一ボタンを留めるのか・留めないのか、筆記用具は胸のポケットに何本まで入れてよいか(入れ過ぎるとユニフォームのラインが崩れる)など細かいところまで揃えます。組織としての印象をアップ出来ます。名札の位置が少し曲がっていても対面のお客様は気づきやすいですから、鏡で必ず確認しましょう。
もしあなたの名札が曲がっていて、私がそれに気づいたお客様でしたら、瞬間私は「この方は自分の名札が曲がっているのに気づかないのだから、お客様である私が嬉しく感じる対応はたぶんお出来にならないな」と感じるでしょう。
基本の徹底が出来ていないと、些細なことほど、こんなことも統一出来ないのとお客様の信頼が揺らいでしまいます。些細な事シリーズでは、ボタンの取れかけもかなり気になるものの一つです。さらに「ズボンのプレスが消えかけている・ストッキングの伝線・スカートのサイドの縫い目が後方にずれていても気づかない着方」などです。
それから現場で実際に目にして顔をしかめてしまうのは、男女共にパンツスーツの場合、貸与されているものなのでズボンの丈をカットしないように言われていると、ズボン丈が足の甲あたりで波うっていたりします。これはアイロンで接着できるテープを売っていますので、すぐに対処しましょう。
※私服で業務の場合
私服の場合、気をつけることがあります。私服だから何でもOKということではなく、職種からあまり逸脱しないデザインや色を選びます。身だしなみの三大原則の一つは「控えめ」です。
③ 靴
靴については、貸与される場合と色だけ指定されて個人で用意する場合があるようです。何れの場合も、手入れの行き届いた靴がポイントです。出勤時に慌てないよう前の晩に汚れを取ってから(この作業が大事)靴墨をつけて磨いておきましょう。
① ~③までを全てクリアすることで、会社名を背負った「組織人としての身だしなみ」が出来あがります。
『魅せる所作』
「見せる」ではなくあえて『魅せる』にしたのは、「気持ちは見えない」の「見えない」から、「身体を使って変換することを自ら意識する」を込めての活字のチョイスです。
所作の基本の基本となるのは、二点です。
一点目、背筋を伸ばす。二点目、指は揃えて伸ばす。さらに手を使うときの基本は両手です。これらをいつも心がけると動きに丁寧な印象を加えられ、かつ相手の視覚に届けやすいです。
背筋は漠然と伸ばすのではなく、頭のてっぺんを天から引っ張られるように、足の裏は床の下から引っ張られているように立ちます。
このイメージで立つと、どの方向から見ても美しく立てます。(椅子に座るときは、上半身は同じイメージ)
「指を揃えて伸ばす」は、指先まで意識を集めて揃えることで気持ちを動作に変換が出来ます。例えば来客を応接室にご案内のようなとき、速やかに指先までそろった腕をあげ「あちらでございます」と方向を指し示すことで所作のグレードが上がります。この時の手の使い方が、名刺交換・書類を渡す・筆記用具を渡す・資料の一ヶ所を指し示すときなど、いろいろな場面で美しく対応できます。
お辞儀をするときには、綺麗に立つが好印象のお辞儀につながります。なお、お辞儀には、会釈(15度位)・敬礼(30~35度位)・最敬礼(45度位)の種類がありますが、何れも背筋が綺麗に伸びている・それぞれの角度に曲げたところで一拍止めている(相手に自分の頭を下げているところをお見せする)が出来ていると、パーフェクトな「魅せるお辞儀」になります。
前回と今回の二回にわたって、視覚情報55%の項目を説明いたしました。新人さんの出来具合をご覧になりながら、まだその出来具合が途中であっても、褒めるところをどんどん探して褒めて差し上げると、承認欲求が強い世代の新人さんのモチベーションが上がります。指導をなさった新人さんの変化を細やかにご覧いただき、その都度褒め言葉を伝えることが皆さんの大きなお仕事と私は考えております。