6月のシリコンバレー視察ツアーの際にお話を伺った、未来予測学者のポール・サッフォー(Paul L. Saffo)博士は、今起こっている新しいメディア革命は「Air B&B」「uber」などに代表されるもので、これらは消費者がコンテンツを作り出すYouTube、eBay、Google、facebook、twitter、wikipediaなどに繋がるものだとして、「クリエイターエコノミー」と呼んでいた。
日本で多くの人が利用しているネットオークションの「Yahoo!オークション」では、Yahoo!は仕組みを提供しているだけで、そこに一般の人を含め誰もが商品を出品でき、オークションで競り落として入手できることが特徴だが、これはYouTubeの動画、facebookの投稿、twitterのtweet、wikipediaの記事なども同様だ。
このように、誰もが売り手にも買い手にも、書き手にも読み手にもなるという形で参加してゆくのが「クリエイターエコノミー」だが、これが世の中を大きく変え始めている。
■Air B&B、Uber
現在、世界で最も宿泊部屋数を有しているのは「Air B&B」というネットによる宿泊予約サービスで、ヒルトン、マリオットなどの大手ホテルチェーンを抜いたと言われている。
「Air B&B」は、使っていない家やマンション、自分が住んでいる家の空いている部屋などを、誰でも登録しホテルのように貸せるサービスで、2008年8月に米サンフランシスコで創業したベンチャー企業だ。
現在190ヶ国、34,000以上の街の80万部屋の宿泊先が登録され、既に通算1,700万人が利用しているが、ホテル業界から見ると思わぬところから競合が登場したことになる。
2009年3月に、やはりサンフランシスコでスタートした、利用者とタクシーやハイヤーなどをスマートフォン・アプリを使って結びつけるベンチャー企業「Uber」も、現在44カ国170都市に展開しており、世界一のタクシー会社と言ってもいいかも知れない。
サンフランシスコなどでは、日本と違い、誰でもタクシーサービスが提供できる法制度となっているため、普通の人がUberに加入してタクシーをやっているが、先日乗った運転手の人は、一日中働けば200~300ドルになると言っていた。
私はサンフランシスコやシリコンバレーで何度もUberを利用しているが、通常のタクシーよりも料金が安く、事前に料金の試算、誰がどこから来るか、その人のレイティング(最高★5)、評判などが分かるため、安心して使え便利なのでタクシーは使わなくなった。
Uberは東京でもハイヤーサービスを今年3月から正式に開始、8月からは既存のタクシーを配車する新たなサービスも始めているが、日本は規制により一般の人が運転手になることはできない。
ホテル業界はAir B&Bに対してまだ危機感を持っていないようだが、タクシー業界はUberに大きな脅威を感じており、パリ、ミラノ、ロンドンなどでは、タクシー運転手によるストライキなどが起こっている。
インターネットやスマートフォンの普及がいよいよ新たな時代を作り始めているが、これらの「クリエイターエコノミー」の進展には要注意だ。