人事担当として、社長とよく社員のことについて話し合う機会があったが、必ず、その返事として、「どうしてあげたらええんや?」と聞かれた。
社員に対する社長の姿勢として、社員一人ひとりの将来のことを、常に真剣に考えている社長の姿は今でも鮮明に覚えている。
「近き者悦べば遠き者来たらん」
企業経営で大切な事として、“顧客満足”という言葉をよく聞くが、その顧客を喜ばせるのは社員である。ゆえに、『“顧客満足”と“社員満足” は天秤の如し』というのは、原則であり、決してどのような環境の変化があろうとも忘れてはならない。
経営計画の発表や会社の方針発表にしても必ず「会社がこうなる」の前に、「あなたがこうなりますよ!」と“社員の喜び”を先に先代社長は掲げ られた。その背景として、社員はどのような事について喜ぶのか?を真剣に考え、社長と議論し、まとめ、大きく分けると、下記の4つとなった。
1、会社の安泰と成長
社員は安心して働ける環境の下で新しい事に挑戦できる。
「夢・ビジョンがある会社(自分の夢が描ける会社)だから。」
「将来性のある会社だから。」
「成長している会社だから。」と社員が言える環境づくりは
トップの仕事である。
そのためにも、夢・ビジョン、将来性、成長性を常に社員と
共に語り合うことだ。
2、利によろこぶ
ここでいう「利」とは、給料などの金銭面だけをさすのではなく、
実力や実績、人脈など本人の将来に有効なものすべてが当て
はまる。
3、名すなわち地位、名誉
役職や肩書きをまったく意識しない人は少ない。また、社員に
とって将来会社が大きくなり、知名度のある企業で働く事は誇り
でもある。そのためにも、“社員の成長”と“会社の成長”を同時
に出来る『仕組み』が重要となり、その仕組みづくりと運用に時間
をかけることがこれからの重要戦略と言える。
4、自由さ
誰でも仕事は楽しく自由にやりたいのが本音である。かといって
勝手気ままに・・・では困るので、トップ、幹部は進むべき方向性を
“具体的”に示し、その方向に進むためのやり方は、自由に(我々は
セルフマネジメントと言っている)社員が一人ひとりが自ら考えて
行動出来る『仕組み』が重要である。
上記4つを踏まえて、“人づくり”の仕組みが出来上がったからこそ、以前のバブル崩壊という未曾有の経済危機を乗り越え、今もなお、この混迷 経済の中で戦い続ける事ができている。
『社員を育くむ事が会社を育くむ』 を忘れずに、“自ら考え行動する社員”を育くむ仕組みづくりに取り組むか否かで将来が決まると言え る。