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第193回 コミュニケーション上手になる仕事の進め方117『他流試合』

デキル社員に育てる! 社員教育の決め手

 前回、「話の伝え方」についてお話をしました。今回は「他流試合」についてお話します。
コラムのタイトルが「他流試合」でご依頼いただいたとき、ベストの候補としてすぐに頭に浮かんだのが、公益財団法人日本電信電話ユーザ協会主催の「電話応対コンクール全国大会」です。私もユーザ協会本部講師の1人として長く関わらせいただいておりますが、参加者の意欲的な研修態度には、毎年刺激をこちらが受けているほどです。良い電話応対はどの会社にも欠かせない基本の基本です。「私、電話応対は出来ているかも」と安心をしてしまうより挑戦という意味で、他の会社はどのような電話対応をしているのだろうかと他流試合の実体験をなさることをお勧めします。

 毎年開催されている電話応対コンクール全国大会の歴史は古く、今年は第64回大会でした。半世紀以上続いている大会だからこそのエピソード(今年私が関係した県の選手から伺いました)を紹介します。「昔父が東京で選手として出場したのですが、残念ながら入賞ならずでしたが、僕は埼玉県大会で入賞しました」とのこと。この方はきっとお父様が熱心に練習相手をされたのだと父子の姿を想像しながら伺いました。
後援は総務省、日本商工会議所、全国商工会連合会などの公的機関・団体に加え、NTT東日本株式会社、NTT西日本株式会社、株式会社NTTドコモ、NTTドコモビジネス株式会社等、通信大手各社が名を連ねています。

   日本電信電話ユーザ協会は全国各都道府県にそれぞれの支部があり、どなたも支部を通して大会参加の申し込みができます。今年の参加者数は延べ5839人で、5839人が総務大臣賞の授与される全国大会優勝を目指して、4月初めの問題発表から11月中旬の全国大会当日まで、およそ6ヶ月間学び続けます。

参照:電話応対コンクール/日本電信電話ユーザ協会

 参加者が様々な企業や会社の方々ですから、コンクールの公平さを鑑みて毎年開催地にちなんだ問題が出題されます。今年は仙台でしたので、参加者は牛たんのお店の通販サイトの運営及び問い合わせの窓口を担当している片倉さんになりきっての競技でした。従って、本来とは違いコールセンターの方も、市役所の方も病院の受付の方もホテルの方も銀行の方など誰もが「片倉さん」として電話応対をしました。設定が同じでないと公平な審査ができないからです。制限時間は1人3分以内。時間オーバーをすると15秒ごとに一点の減点になります。

 審査基準は6項目で審査し、合計点は100点。①最初の印象(初期応対)の第一声から本題に入るまでの印象のチェック、5点②基本応対スキルの語調・語感・間・言葉遣い等や自然な話し方であるかどうかのチェック、20点③コミュニケーションスキルの傾聴力、共感力・手際・機転・説明の仕方等コミュニケーションスキルのチェック、20点④情報・サービスの提供は確かな情報・業務知識を持って、情報やサービスをお客様へ提供できたかのチェック、20点⑤最後の印象や電話の最後(クロージング)は、余韻効果のチェック、5点⑥全体評価。例えば、お客様の知りたいことを分かりやすい言葉で伝えることができたか、今後もこのお店を利用したいと思ったか、全体として温かみがあり感じの良い応対であったか等のチェック、30点。

さらに詳しくお話すると、
1.最初の印象では、「第一声」ひとつを取っても、無意識に発声するのではなく、第一声の第一音から意識する必要があります。ベルの音を聞いたとたんに口の周りにある口輪筋を上の歯が八本見える位横に開きます。これで人から見た時の表情がしっかり笑顔に見えます。その状態から「お」の発声すると、「お」も音程が明るくなります。また、電話の相手は目の前にいると想像しアイコンタクトもしっかり取ります。このとき上半身はやや前に傾けます。これらを一瞬で準備してから『お早うございます』や『お電話ありがとうございます』を言うと好印象の第一音に変わります。(これはちなみに私の第一音目の出し方の説明です)もし皆さんが初めて参加をなさるとしたら、今まで気にも留めていなかったことなども結構覚えていただけるとお約束できます。

2.基本応対スキルでは、自然な話し方が大事です。よし頑張ろうと力み過ぎると抑揚も過度になり、印象はプラスよりマイナスに働いてしまいます。話すスピードについては、つい自分のスピードを相手に押し付けやすいので、相手のスピードに合わせるゆとりを持ちましょう。

3.コミュニケーションスキルでは、傾聴力において、タイミングよく相槌を入れると滑らかな会話のキャッチボールを感じさせることができます。

4.情報・サービスの提供では、自分の所属している範囲の情報や知識だけではなく、お客様にお知らせ出来ることが一つでも多く持てるよう、360度方向にアンテナを張っておくことが大切です。

5.最後の印象では、「終わりの挨拶の前にこの電話は終了と気持ちを終わらせてしまわない」こと。これは驚くほど正直に「気持ちはすでに終わっています」を伝えてしまう音声表現になってしまいます。余韻効果は、○○様とのやりとりを終わらせるのが「名残惜しい」と強く願うと良いでしょう。

6.全体評価では、第一音目から最後まで話し言葉を意識すると、分かり易くて温かみのある優しい印象が醸しだされます。

 2025年の全国一位に輝いたのは、奈良県代表の株式会社サロンドロワイヤル(一般社団法人アクティブケア)の柴山順子さんです。結果発表のとき、「奈良県」が最初に聞こえましたが、日本初の女性首相高市早苗さんに続き、第64回電話応対コンクール全国大会の優勝者も「奈良県」の方!すごーいと思いました。きっと柴山さんは、高市首相の「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」が今年の流行語大賞になったように、ご自分の原稿に拘って「書き換えて書き換えて書き換えて書き換えて書き換えてまいりました」を貫かれての優勝だったのでしょう。4月の問題発表から全国大会まで三千回の書き換えた「拘り」に脱帽です。単純計算しても一日19回!の書き換えをなさり続けたということです。

 さらに驚いたのは、柴山さんは過去の優勝者の中で最年長の67歳での優勝だそうです。私は20年以上、毎年全国大会が開催される県に(かつて沖縄での全国大会のみ、プライベートの理由で伺えていません)通い続けていますが、このようなスーパーウーマンに出会えたのはこの上ない喜びでした。舞台の中央でにこやかに総務大臣賞を授与されている柴山さんを拝見しながら、きっと柴山さんは3001回目の原稿の書き換え作業を頭の中でなさっていたのではないかと勝手な想像をしてしまいました。そしてインタビューの最後には、「電話応対の練習を仲間が協力してくれた」と、とても感謝なさっていました。他流試合に挑戦したことでぐんと自己成長をなさり、他社のお仲間との交流を人生の財産となさったこと、それらの大切さを教えてくださいました。柴山さん、素晴らしいお手本になっていただきありがとうございました!そして大変お疲れ様でした。ユーザ協会のホームページにアクセスなさると柴山さんの応対模様をご覧になれます。舞台の柴山さんは、小柄でとてもチャーミングな方でした。真剣そのものの半年を過ごすと、人はより魅力的になるとも学びました。

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