5 不正防止は目的ではない
不正対策というと、監視を強化したり、ルールで縛ったりと、とかく「守りの姿勢」に偏りがちです。しかし、それでは社員の心には「管理されている」という窮屈さや不信感が生まれ、かえって組織全体の活力を削ぐことにもつながりかねません。
そして、不正防止は決して「目的」ではありません。事業のミッションやビジョンを実現するための不可欠な「手段」にすぎません。
ぜひ、この手段を最適化するために、「不正のトライアングル」の視点から、自社の「動機」「機会」「正当化」における潜在的な課題を、冷静に見つめ直してみましょう。
そうすれば、漫然とした対策ではなく、本当に必要なところに的を絞り、効果的に不正のリスクを減らすことができるはずです。
そして、この不正防止策の根底にあるべきは、社員一人ひとりの「ウェルビーイング」への配慮です。社員が「この会社で働くことに喜びを感じる」「自分は大切にされている」と心から思える職場環境こそが、自ら不正を思いとどまる強い「倫理観」を育みます。
安心して、誇りを持って仕事に取り組める環境は、不意の「動機」を打ち消し、不正の「機会」を奪い、安易な「正当化」を許さない、最も強固な不正防止策となるはずです。
人は誰しも「誠実でありたい」とか「自分自身が良いと思える会社に貢献したい」という思いを必ず持っています。その思いを率直に表現できる関係性を作り出すこと、そして、それに応えることこそ、経営の仕事、持続的な成長を力強く後押しする経営の有り方でしょう。
























