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人間学・古典

第112講 「論語その12」
我を博むるに文をもってし、我を約するに礼をもってす。

先人の名句名言の教え 東洋思想に学ぶ経営学


【意味】
自分の心を教養という包装紙で表現し、自分の行動を礼法という包装紙で表現する。



【解説】
 現代語では「文=文字、文字で書いた文章」の意味合いが主流ですが、古代の「文」は(1)外面を飾る模様の意から派生し、(2)自分の本心を文章で包装したもの(手紙)、(3)自分の本心を包み込む教養品性などの意にもなります。よって掲句の「文」は、自分の心の状態(気持ち)を包んで差し出す包装紙のようなものと捉えます。
 これに対して「礼」は現代語とほぼ同じで、(1)行動秩序を保つための作法、(2)挨拶などの礼儀作法、(3)内面品性からにじみ出る立ち居振る舞いとなり、掲句の「礼」は、日常行動を包んで差し出す包装紙のようなものになります。
 
 一般に生きることは、「自分の心境と行動を世間に晒す」ことですから、我が心と身体の表現提供法(包装法)に気を配る必要が生じます。その表現の際に頼りになるものは、心にあっては自分が身に付けた教養品性であり、身体にあっては自分が身に付けた礼法となります。したがって「博ろむるに文」とは心を教養品性によって表現することであり、「約するの礼」とは身(行動)を礼法に従って表現することになります。
 これを魚料理に例えてみます。猫の餌であれば丸ごと魚を放り投げれば済みますが、格式を誇る料理店となれば、その素材を刺身や煮つけに料理し、皿や膳に気を遣い、料理を出す部屋の雰囲気や賄いさんの作法にも配慮をします。
 論語の別な言葉に「文質彬々として、然る後に君子なり」とあります。文とは外見の飾りや風格であり、質とは心の中味の品性ですから、外見の風格と内面の品性が共に立派な人物が君子(立派な人物)となるのです。
 
 明治大正時代に活躍した田山花袋の『田舎教師』に、次のような記述があります。
 「青瓢箪(あおびょうたん)のような顔をして居る青年ばかりこしらえちゃ、学問が出来て思想が高尚になったって、何の役にも立たん」。
 別な角度から見れば、「学問には学理と活理の二段階」がありますが、机上の学問の理屈は学校では教えやすく、学問の実践活用は職場体験に繋がり、閉鎖社会の学校では教えにくいといわれます。しかし教える側が活理の工夫をすれば、意外に実践的になるものです。
 簿記会計学は「損得の学問」といわれ、その基本原理の算式は、「収益-費用=損益」となりますが、この算式を覚えたところで金儲けはできません。しかし学問した者を学問しただけ幸せにするのが、教える者の力量ですから、次のよう教えることにより立派な活理の実践学となります。
 「腰を曲げて声を出すお辞儀の費用はゼロであるが、
      上手な挨拶をすれば相手方に好印象という収益をもたらす。
            これが『挨拶応用上の損得の学問』である」(巌海)

 

杉山巌海

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