顧客第一主義を掲げる企業は少なくない。常に顧客との接点を大切にしながら、自社商品のファンを創り出している企業の一つが、ユースキン製薬株式会社(本社・川崎市)である。同社の業務は医薬品・医薬部外品・化粧品の輸出入及び製造販売業。創業は昭和30年。
同社の主力商品といえば、「ユースキン」で、製造開始から53年になる超ロングセラー商品。その人気の高さは年間350万個を超える販売数に表れている。親から子へ、そして孫、三世代が愛用しているもので、"世代を超えたリピート商品"という呼ばれ方もしている。ビタミン系ハンドクリームにおいてはシェア50%を越えるトップブランドである。
なぜ、ハンドクリーム「ユースキン」が人気を集めているのだろうか。商品力の強さが一番だが、それに加えて、メーカーと消費者、直接の交流の場も積極的に展開している。11年前から始めた「格言選考会」というヘビーユーザーが集い、一般ユーザーから募集した格言(五七五)を31篇に絞り、「格言集カレンダー」を制作するというもの。
同社は11月10日を「ハンドクリームの日」と制定。これは日本記念日協会にも登録した正式な記念日である。なぜ、11月10日を選んだのか。「いい手(ン)の日」という語呂合わせの意味と、過去30年間の気象庁データによれば、最低気温10度を割る境目の日、という。最低気温10度を割ると、湿度が下がり、乾燥が進む。そのため、寒さや乾燥から肌を守るために、きちんとしたスキンケアが必要になり、急速に薬局でハンドクリームが売れ始める時期なのだという。
同社の販売促進の特徴は、サンプリング戦略をとっている。「商品販売数の2倍をサンプリングする」という考え方である。「ユースキン」は皮膚のひび・あかぎれ・しもやけを治し、健康な肌にする親水性のクリームである。「使ってもらってこそ、良さがわかる」ということから、サンプリングで商品を知ってもらう戦略を取っている。
同社の野渡和義社長は徹底した現場志向で、社員に対して、「現場に行け」「現場で考えろ」と檄を飛ばす。商品の中に一緒に入っているハガキアンケートが消費者から本社に寄せられる。社長はそのハガキアンケートを読み、返事を書くのを重要視している。商品開発のヒント、アイデアを学ぶ絶好の機会と捉えているからだ。
上妻英夫