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社長業

Vol.127 「競争力・信用力を守る2つのプロセス」

作間信司の経営無形庵(けいえいむぎょうあん)

 今回は、2つのプロセスで「会社の大ピンチ」を救った話をお伝えしたい。
 
 
 食関連の仕事をしているH社に藤井課長という方がいて、今、巷で話題の事故米のMフーズ関連の企業から「安いお米」が入るぞと、セールスがあり、当然、原材料高騰の折から、サンプルを取り寄せ、自社内で炊いて試食をした。今年の6月のことである。
 
 普通に食べれば通常のお米と遜色ないし、見た目も変わらないが、お米の味を守ることに命を懸けている藤井課長の舌には、少しだけ「不味い」感覚が残った。
 
 そこで、片道2時間30分をかけて当該企業の倉庫兼事務所に商談と称して出掛けて行って、自分の目で納得いくまで確認しようとした。「ひと目」見て食材料を扱う管理水準でないと判断し、結局この商談は破談となって新規納入にはならなかった。
 
 今にして思えば、その時は藤井課長も事故米のことは知らず、自分の責任の範囲において意志決定をしただけである。その後、今回の報道となり「全社員、ホッと胸をなでおろした」次第である。万が一の時は「会社存続のピンチ」となっていたハズである。
 

 H社の経営理念には「おいしさ」と「安心」が謳ってあり、それを忠実に、誠実に守ってくれた藤井課長の行動力、決断力が会社を、ピンチから未然に防いでくれた。
 
 現物は確認しても現場まで足を運んで現実を押さえている購買担当はなかなかいない。また一方で、昨今のコスト高騰の折、現場の意見を押しつぶしても値段優先で購入を決断する社長・役員も沢山いらっしゃる。殺し文句は一言「儲からなかったら、どーするんだ!」と。
 
 上位者になればなる程、結果が全てになるが、その結果に目を奪われるばかりに途中のプロセス(行動)と考え方(思考プロセス)に想いが至らなくなってしまうものだ。
 

 主力の「お米」を新規に納入しようとすれば「慎重の上にも慎重に」と机の上で考えればそうなるが現実の仕事では、慣れも手伝って、ついつい自分の眼力を過信し、安易な方向へ流れてしまう。
 
 会社の競争力も信用力も全社員の小さな1つ1つの仕事でつみあげられているという事を、もう一度自覚しよう。特に「長」のつく責任者は物事の判断・決定権者であるだけに思考も行動もプロセスに忠実に戻ることをおすすめする。
 

 H社長は、宝となる、いい社員を育て、権限を与えている。

 

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