前回、「お得意様への対応」についてお話しました。今回は「自分の役割から一歩背伸びをする」についてお話します。
自分の役割から一歩背伸びをしていただくためには、当たり前のことですが自分の役割がしっかり出来ていないと「背伸び」は出来ないことを理解なさってください。そこがスタートラインです。「自分の役割がしっかり出来る」と言う言葉の前に「いつも」を付けた「私はいつも自分の役割が出来る」の状態が必要です。このことはとても大事なポイントです。
では、「背伸び」をする原動力を考えてみましょう。「背伸び」をするには両足の踵を同時に上げることで背のびの動作が完了します。これを仕事に置き換えると、「背伸び」の原動力は「観察力」ではないでしょうか。「見取り稽古」とも言えます。
社内で動きの良い先輩や上司は、あなたが身につけた基本の動きに、どのような言動のプラスアルファーを付けていらっしゃるかよくご覧になってください。もちろん基本の徹底をクリアされたあなたは、出来ていない方より応用を利かせることが出来るでしょう。しかし経験値をお持ちの先輩・上司の言動は、あなたの想像を超えているところが大いにあります。そのあたりを細やかに観察し、それらの気づきは一つも漏らさずメモに残しておきましょう。
例えば、
・A先輩は、アイコンタクトを長めにとっている気がする。
・B先輩は、昼休みが終わる前に髪を解いて結び直している。午後のスイッチが入るそうだ。
・隣の部署のC上司は、朝いつも先に笑顔で「おはよう」と声をかけてくれる。恐縮。明日こそ絶対私が先に「おはようございます」を言おう!
・D先輩は目の前の電話が鳴ると、背筋をシャンと正してから電話に出ている。
・E係長は、お天気が良くない日は晴れている日より笑顔が多い感じ。皆の気持ちをひきあげようとしている?
などと、観察結果や感想を簡単に書き記します。せっかく良いところを収集したのですから、自分でも同じように振舞えるよう独りロールプレイングをして身体で覚えておいてください。
相手の良いところが見えれば見えるほど相手が好きになります。すると自然の流れとして相手に喜んで貰いたい気持ちが増してきます。「させていただく」と言う気持ちが自然に湧いてきます。無理なく「背伸び」に繋がっていきます。相手の良いところを観察し続けてください。時間の問題で、先輩や上司に「そこまで気を回すことが出来るようになってくれて助かる」と思っていただけます。
研修インストラクターを四半世紀以上続ける中で、相手に喜んでもらえるコミュニケーションは考えれば考えるほど難しいと感じます。「十人十色」と言う言葉がありますが、「十人十色」の人間同士が良好なコミュニケーションを取るためには、慎重さも必要でしょう。自分が気を回してしようとしていることは相手にとって本当に助かることなのか、それとも自分自身の自己満足を促す範囲のレベルではないかと疑うことも大切と考えます。
- ホーム
- デキル社員に育てる! 社員教育の決め手
- 第167回 コミュニケーション上手になる仕事の進め方89「自分の役割から一歩背伸びをする」