「社長を出せ!」「上司を出せ!」と言われても、すぐに応じないことが好ましい本当の理由
「社長を出せ!」「上司を出せ!」とクレーム対応中にお客様から言われても、それに応じなくて良いように、話を進めなければならないことと、担当者のその場でのトークを第12講で書きました。
第12講では、「お客様が社長を出せ!」と言ったのは、怒りが強くなり感情がたかまって口が滑って言ってしまった可能性が高く、お客様は本当に社長を出してほしいとは思っていないから、という説明をしました。
でも、企業側にも「社長を出せ!」「上司を出せ!」の要望に応じることを避けなければならない理由があります。
その1つは、社長や上司の方がクレーム対応のスキルがないので、突然、交代をして対応をしたところで好ましいゴールにならないということです。その根拠は、毎日お客様と会話をしていない人には、適正なクレーム対応はできないということです。
つまり、何度も何度も私が記述しているように、「お客様は、神様ではない・弱者ではない」という考え方を知らない。また、その立ち位置で会話をするトークを持っていない。さらに、この問題はどの法律に関わり、どのような手順で解明していくのかを知らない。という人に、突然のクレーム対応は無理だということです。
毎日、お客様と会話をしている対応担当者と比べて、経験も知識も劣るのだということ。対応担当者より勝っているのは、対応担当者より少し、自分の裁量で解決案を提示しても良いという権限があることです。しかし、そのクレーム対応の経験も知識もない上司たちは、その権限すら、最適に使う判断ができないのです。
「上司が、対応を代わろうとしてくれない」「上司がどんどん人事異動で代わってしまって、その人によって、判断が違う」「上司が、すぐにクレーマー客に金品を渡すことを約束してしまう」「自分は5年以上この仕事をしているが、新任とはいえ上司には違いがないので、新任上司の判断に従うしかない」など、現場で毎日、お客様のクレーム対応をしている契約社員の方や、コミュニケーターや、オペレーターの方の声が私に届きます。その時、私はいつもこう言います。
◆新任の上司に代わってもらうことが妥当だと、あなたが考えないこと。だって絶対に、この上司は、あなた以上にうまく対応できるはずがないのだから。
◆代わられた新任上司も、自信がないまま対応をして、とんでもないことを言ってしまうことになる。
◆上司と言えども、素人。あなたのほうが、この仕事の経験者なんだから、素人を頼らないこと。
◆上司はクレーム対応は素人だから頼りにならないけど、上司にしかできないことをしっかりとやってもらうこと。たとえば、会社と交渉して、教育予算の確保や、システムの改良や、組織構造の変更や、同業社とのネットワーク構築など。
ここで私が言いたかったことは、『上司を出せ!』と言われても、すぐに出さないことの本当の理由は、上司のほうが、毎日電話を取っている担当者より、対応がおぼつかないのだから、簡単に代わってはいけない。うまく行くはずがないからです。
上司が担当者に代わってクレーム対応をするときは、一度、電話を切って、この問題の原因に関する法律違反の有無と、それに相当する企業としての対応と、相手が引き下がらざるをえないゴールまでのシナリオを作ってから、相手との会話時間を持つことが必要です。なぜなら、上司の方が、対応の経験が少ない素人だからです。