前回、「来客応対と訪問マナーについての総チェック」についてお話しました。今回は「来客応対と訪問マナーについての総チェック二回目」です。前回の「1.受付は会社の顔」と「2.名刺」に続いて、今回は「3.ご案内の仕方」についてお話します。
3.好印象を与えるご案内の仕方
「ご案内」と言う言葉を聞いて、皆様は一番先に考えるのは何でしょうか?ご案内なさる方の言動で、自社の印象を左右してしまうということです。まず、たかがご案内と思わないことが大切です。
① ご案内する場所をお知らせします。笑顔で「○○様、△△にご案内いたします」と言葉で伝えます。と同時にご案内する方向に片腕を使って指し示します(手は指を揃えて伸ばすと綺麗)。ちなみに肘で距離を示すことが出来ます。きちんとした所作を見てお客様は、ご案内先のお部屋の雰囲気の良さをも感じとるでしょう。勿論、使用するお部屋の空調や整理整頓は、事前に必ずチェックしておきます。お部屋そのものは物を言いませんが、ウェルカムを十分伝えられる雰囲気を存在させることが出来ます。
② 案内者の「身だしなみ」もご案内する大事な要素です。案内者はご案内の業務をする前に、何らかの仕事をしていたかも知れません。ご案内直前に、鏡で身だしなみの360度方向を見直すことが必要です。個人的体験ですが、前を進む案内者のスカートの縫い目が10センチ位ずれていることにふと気づいたことがあります。お知らせしようかどうしようか、でも初対面だしと悩んだ末言えなかったことがあります。
③ 歩き方。
訪問者には廊下の真ん中を歩いていただけるよう、ご案内する時の自分の立ち位置を決めます。歩き始める足はお客様から見て遠い方の足からです。これは共有する空間が作れるからです。訪問者に近い足からスタートすると身体が少し外側に傾き、かすかであってもお客様との空間を遮るようになります。若い頃はマナーって堅苦しいなと勝手に思っていましたが、このように細やかに相手のことを気遣う所作であることを知るごとにどんどん好きになりました。次に歩く速度です。瞬時にお客様の速度と歩幅を観察してその速度と歩幅に合わせます。ご案内する相手が同性の方でないときは、注意が必要です。しっかり見極めてください。
【廊下をご案内中、前から上司や社長がやってきたら】
ご案内しているお客様優先なので、道を譲る必要はありません。ご案内は会社の代表としての仕事です。
【案内する方向が90度に曲がっていたら】
社内の構造をお客様は知らないため、案内者は角にきたら、後ろを振り返り立ち止まってお客様を待ちます。また私の体験で恐縮です。廊下の展示物が目に留まり、ほんの少し目線を正面から外している間に、先を進んでいた案内者が消えてしまって、とても驚いたことがあります。
【ご案内場所が2階でかつ階段をご案内する時】
「2階へご案内します。お先にお上りください。どうぞ手すり側をお進みくださいませ。」と、立ち止まってお声かけします。そして、案内者はお客様の真後ろの2,3段下から登りますが、先ほどの腕の形で指し示す動作も同時にします。なぜ階段ではお客様に先に進んでいただくのでしょう。理由は簡単です。ご案内するという対応に求められるのは、お客様の安全です。下から案内者が進むと、お客様が万一転んでしまったとき、すぐに手を差し伸べて助けることが出来るからです。そして階段を上り終わる4,5段手前で、「○○様、お先に失礼します」と言い、足早にお客様を追い越して上で待ちます。そしてご案内の再開です。
【ご案内する場所まで距離があるとき」
初対面の場合、ある距離を無言で歩くのは、気まずい感じになり易いです。差し障りのないプラスαの会話を投げかけて下さい。例えば「本日は朝からお天気ですね」レベルの内容で十分です。お客様も「そうですね」と答えやすいです。この場面では仕事の話はNGです。
④ ドアの開け方。外開きと内開きがあります。
【外開きの場合】廊下に向かってドアが開くのを外開きと言います。案内者は、まずドアを3回ノックしてドアを10センチ位開けて先に「失礼いたします」と声を入れます。内側から「どうぞ」の声が聞こえるのを確認してからお客様が入室しやすい幅を開けてお客様に先に入っていただきます。ドアに向かってノブがドアの左側にあれば右手で、ノブが右側にあれば左手で持ってドアをあけると仕草が綺麗に見えます。(その部屋が空き室とわかっていても、念のため声を先に入れることを励行してください)。
⑤ 【内開きの場合】
案内者が先に部屋に入ります。些細な事といってしまえばそれまでですが、お客様このお部屋は私が先に入っても何も起こらない安全な場所ですということを、無言で瞬間に伝えられるのです。入室したら、お客様に「どうぞこちらにお掛けになってお待ちください」と上席に向けて指を伸ばした手で指し示しながら着席をお勧めします。
〈注意〉ご案内の説明のため、所作の仕方に多く触れていますが、これらは日本におけるマナーです。もしヨーロッパからの外国人のお客様に「応接室へご案内いたします」と右手を挙げて指し示す所作をうっかり添えてしまうと、その方はマイナスの意味で驚いてしまいます。その所作は、実はヒトラーのナチス式敬礼に似ていると言われているのです。今後益々グローバル化は進みますので、頭の片隅にインプットをしておくと、外国人の応対をするときの心の準備が出来ます。
※その他のご案内
①電話での道案内
今の時代は訪問者側がスマホなどで簡単に調べられますが、お年を召したお客様からのお電話を想定してポイントを書きます。まず、質問の優先順位があります。頭のなかに自分中心の地図を描いてしまうと、相手には分かりにくい道案内になってしまいます。一番にすることは、相手の交通手段と案内を開始する起点を聞くことです。「○○様、お車でいらっしゃるのですね。最寄り駅の○○はお分かりになるということですので、○○駅からご案内いたします。よろしいでしょうか?」
次に目安として名前に出していただきたいのは誰にでも分かりやすい「公共の施設名」(学校・警察署・消防署・公共図書館など)です。特にそのような施設がない時は「三つ目の信号を左折」のような表現でもよいです。かつての経験で「信号二つ目を右折してすぐです。」との案内に信号を数えながら車で向かったとき、信号と信号の間に踏み切りがありました。(でも、受けた案内に踏切は出ませんでした)踏切は公共物扱いで言葉に出して欲しいと思います。また別のご案内を受けたときですが、「交番の隣のクリーム色のビルの3階です」と伺いました。交番の隣にあったのは私の感覚としては、「黄土色のビル」でした。主観が入ると人はそれぞれの感じかたがあるので、誰が見ても同じと認識出来る「交番の隣の『8階建て』のビルの3階です」のような表現がベターです。
②洗面所のご案内
洗面所直前までの律儀なご案内の上、加えて「手前が和式で奥が洋式です」と言う言葉を添えていただくという細やかな心配りを受けたことがあります。ただこのようなご案内のときは、「洗面所はあちらでございます」と言いながら仕草で方向を示し、やや離れたところでお待ちいただくのが十分スマートなご案内です。
次回は三回目として、「4.席次」以降のお話を続ける予定です。