menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

人事・労務

第35話 中小企業こそより高い賃上げ率を目指すべきである

賃金決定の定石

中小企業であっても、大手に負けない賃上げ率を継続!

 10月下旬に入り、すでに来春の賃上げがニュースで採り上げられています。


 連合は、2024年春闘で5%以上の賃上げを要求する方針を示しました。基本給を底上げするベースアップが3%、定昇分と合わせて5%以上を目指すということです。2023年度は「5%程度」が統一要求でしたので、これを更に強めた形となります。


 連合集計による2023年春闘の妥結結果(平均賃金方式)は、企業規模300人以上で3.64%、300人未満でも3.23%とそれぞれ前年比で1%以上増加しました。経団連の集計でも、大手企業3.99%、中小企業3.00%と、やはり前年を1%以上上回る結果となっています。


 中小企業(連合:300人未満)は3.23%となりましたが、このうち1.8%が定期昇給分(賃金カーブ維持分)だとすると、ベースアップ分はわずか1.48%です。2022年度消費者物価指数(全国コアCPI:除く生鮮食品)の上昇率は3.0%ですので、ベア分では物価上昇分の半分もカバーできていないことになります。


 直近の9月の消費者物価上昇率は、全国コアCPI+2.8%、全国新コアコアCPI(除く生鮮食品・エネルギー)+4.2%となりました。物価上昇が続く中にあって、8月の実質賃金(速報)では17か月連続でマイナスを記録、賃金が物価の上昇に追い付けない状況は続いています。来春の労使交渉では、実質賃金がプラスに転化できるかどうかが焦点となるでしょう。


 ところで、これまでの賃上げ妥結結果を見ていると、「大手企業はいつでも賃上げ率が高く、企業体力の劣る中小企業で賃上げ率が低いのが当たり前だ」と思ってしまいがちです。しかし、これは明らかに間違いです。


 実際のところ、1990年代に入るまでは、大手企業と中小企業の賃上げ率は拮抗していました。中小企業といえども成長・発展を目指し、大手企業に片を並べる賃上げを実施する企業が多くあったのです。しかし、バブル崩壊後の93年ごろからは、「大手企業の賃上げ率が高く、中小企業の賃上げ率が低い」状態が当たり前になり、今日に至っています。


 「ベース賃金の高い大手企業ほど賃上げ率が常に高く、ベース賃金の低い中小企業の賃上げ率が常に低い」という状況が30年も続いたために、企業規模間での賃金格差は大きく広がりました。


 こうした状況を打破するには、中小企業であってもその生産性を高めつつ、大手企業にも負けない賃上げ率を継続し、戦略的・計画的に賃金水準の引上げを図ることが大切です。


 今日の人手不足は「景気の波」によるものではありません。人口減少が進むなかにあって少子高齢化がさらに進行するという状況は、我々が初めて直面する構造的な問題です。


 ただし、どのような環境下にあっても人材の獲得、育成、定着なくして事業の発展は望めません。その優良な人材確保のためには、世間並み以上の賃金水準を目指し、そして社員が将来を見通せる人事体制作りを急ぐことが求められます。

第34話 将来の最低賃金の引き上げにいかに対応すべきか前のページ

第36話 年末賞与の支給動向次のページ

JMCAおすすめ商品・サービスopen_in_new

関連セミナー・商品

  1. 《3月賃金実務講座》育成につなげる持続可能な給与改定  定昇・ベアの最適解

    セミナー

    《3月賃金実務講座》育成につなげる持続可能な給与改定  定昇・ベアの最適解

  2. 賃金処遇と人事施策のやり方

    音声・映像

    賃金処遇と人事施策のやり方

  3. 緊急事態下での「賃金と処遇」

    音声・映像

    緊急事態下での「賃金と処遇」

関連記事

  1. 第26話 最低賃金の引上げとその影響を考える

  2. 第53話 5年後に迫る『正社員の最低賃金25万円』を見据えたベースアップを!

  3. 第60話 評価項目と着眼点の整理 — 管理職育成のための制度運用の要

最新の経営コラム

  1. 経験ゼロの分野でも成果を出せる社長は、まず何をしているのか

  2. 第199話 中国車、先進国への輸出も急増

  3. 第九十二話 全社員でつくる信頼 アルミオーダー型材専門・関西金属製作所の挑戦

ランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. マネジメント

    第八十八話 「自分が会社に何ができるかを常に考えろ」(株式会社ランシステム)
  2. マネジメント

    第52回 『象を食べる方法』
  3. ブランド

    Appropriate(ふさわしい・最適)3「晴れの日のバストアップイメージ」-...
  4. 税務・会計

    第93回 手形サイト60日に短縮、中小企業の資金繰り改善に期待
  5. 経済・株式・資産

    第109話 中小企業の事業承継(12)
keyboard_arrow_up