初期対応で成功する法則 Part1:初級編(1)
(※エスカイヤニュース2011年12月号特集 寄稿文より)
1.クレームは誠意だけで解決できるものではなく、テクニックを使って解決するもの
クレーム対応の手法は、B to B(Business to Business)と、B to C(Business to Consumer)で随分違います。端的に言えば、B to Bの場合は、事実を究明し、自社の原因があるのであれば再発防止策をお約束し、不履行になってしまった格好の契約に金品で対処するのが通例です。そして、B to Cの場合は、お客様がその契約をした背景や、怒りを感じる感性はバラエティに富んでいますので、直面している対応者の難易度は高く、疲弊も重なるものです。そんな、対応者のための失敗しないクレーム対応の方法をお話しします。
まずは、3つの心構えから説明いたしましょう。
■『話し合い』という『誠意』が解決を導くのではなく、クレーム対応のテクニックが解決を導いてくれる
クレームのお申し出者の怒りは、頭を下げてお詫びしたら鎮まるというものではありません。簡単に頭を下げたり、金品をお渡ししたりと言う企業なりの誠意でクレームを解決しようと思うのは失敗のもと。クレーム対応には相手の気持ちが柔らかくする手順や、トーク、手法といったテクニックが必要です。
■お客様に満足してもらうことだけを考えて対応すると失敗します
対応が終わった瞬間に対応者が疲弊から解放され、さらに晴れやかな気持ちになるようなクレーム対応を目指しましょう。それはどういう事かと言うと、「あなたに免じて許しましょう」とお客様に最後に言っていただくことです。それがクレーム対応のゴールです。
■解決できなくてもお客様に諦めてもらうこと
お申し出のクレームそのものがご希望の解決に至らなくても、お客様が仕方がないと諦めてくれればそれが解決となります。どんな困難な要望も、「あなたに免じて諦めます」とお客様が言いたくなるための対応には、それ相当のテクニックが必要なのです。
2.お客様が困っている「心情」を理解しよう
次にクレームはなぜ発生するのか。その本質を知っておきましょう。
たとえばレストランで、飲物をテーブルに置く時にこぼしてしまったら、すぐに謝って濡れた箇所を乾いたタオルで拭き、新しい飲み物を持ってくる。ほとんどのクレームはこのような基本的な対応をすると、お客様はしかたなく許してくれます。しかし、わずかながら、お客様の怒りがおさまらず、こじれていくクレームもあります。何故、そのお客様のクレームはこじれてしまったのか。それは思いがけない出来事が発生したことで、新たな困りごとが発生し、複雑な気持ちが芽生えたにもかかわらず、そのお困りごとと芽生えている複雑な気持ちを、対応者が心情的に満たそうとする態度を示さないからです。思いがけない出来事により、そのお客様だけにとっては困ったことが起きているのです。これがクレームを申し出、ひきさがらない代表的な消費者の心理だと言えます。
ある家電量販店での実例です。子どもが前々から欲しがっていたステレオコンポがありました。でも特殊な機能が付いているもので、なかなか手に入りません。それを父親がインターネットで見つけ、受験の合格祝いのサプライズとして、その家電の店を通して取り寄せました。子どもはすごく感激したものの、音が鳴らない。壊れていたんです。商品は交換しましたが、父親は釈然としません。父親としての面目丸潰れだからです。
そんな父親の心情を理解せず交換で済まそうとしたために「交換したらそれで済む話ではないだろう!」とこじれてしまったのです。本来の企業の基本対応を提示しているにもかかわらず、引き下がらないお客様には交換だけでは済されない、何か困った事情があります。対応者はそのことに気づき、それを探らなければなりません。
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