決算が近づくと、各社、今期の業績予想を行い、
決算対策の検討を行います。
「わが社ではもう節税策として打つ手がありません。
このままいくと、3億円近く税金を払わないといけなくなります。
オペリーティングリースなんて、どう思いますか?」
こう話したのは、赤坂商店(仮)の赤坂太郎社長(仮名)です。
業績好調は結構なことですが、赤坂社長は、浮かない表情をしています。
赤坂商店は、卸売業と小売業を、関西一円で展開しています。
財務、税務に強い赤坂社長からすると、
打てる手は、一通り実施してきたという自負がありました。
赤坂社長から、オペレーティングリースについて聞かれましたが、
「オペレーティングリースは、時期尚早。」と答えました。
オペリーティングリースというのは、飛行機、船舶、コンテナ、トラックを
「ファンド(基金のような組織)」への出資という形で購入することです。
このファンド(基金)というのは、飛行機、船舶、コンテナ、トラックを購入して、
リースするために特別につくられる会社のことをいいます。
ファンド(基金)の種類にもよりますが、最低出資額が3000万円から、
それ以上は、1口1000万円単位で、上積みできます。
5000万円でも1億円でも5億円でも、出資可能です。
出資した金額は、初年度に60%~90%ほどの割合で損金に算入できます。
(モノにもよりますが、100%損金にできる商品もあります。)
このファンド(基金)は、航空会社や船会社か毎期リース料を受け取りますが、
一方で、機体や船そのものは、定率法で初年度から、減価償却費をドンっと
大きく計上します。よって、当初の決算は、大きな赤字になります。
これがファンド(基金)の決算になるわけですが、
投資者(=私たち)は、この決算の状況(つまり、大きな赤字)を、
投資金額に反映させることができます。
この仕組みは割愛しますが、特別にそのような制度になっているのです。
投資した初年度は、大赤字が発生することとなるため、
出資する側も、赤字となり、結果、損金として計上できる、というわけです。
ただし、一定期間が経過したあとは、投資したお金はまとまって戻ってきます。
よって、その出口の対策も考えておく必要があります。
(退職金などのような大きな損失とぶつけることが一番です)
このオペリーティングリースで考えられるリスクは、大きく2つです。
①借主の経営破綻
コロナ時のLCC(格安航空会社)がそうですが、
飛行機なら、機体を借りている航空会社(エアライン)が
経営破綻すると、ファンド(基金)には、リース料が入ってきません。
ファンド(基金)に入る収入がなくなるわけですから、
出資者である私たちへの分配金もなくなります。
下手すれば、元本丸ごと、回収不能、これも実際にありえます。
②為替リスク
現実的にこのリスクが一番、身近なものといえます。
オペリーティングリースへの出資は、比較的中期(8年程度)のものが多く、
かつ、為替リスクを伴うものが多いです。
簡単にいえば、満期時(例えば、8年後)に、為替が円高にふれれば、
戻ってくる元本が目減りします。
商品にもよりますが、例えば、出資時点1ドル150円
→満期時1ドル130円になると、戻ってくる元本(円)20%程度減ります。
逆に1ドル150円から円安になれば、戻ってくる元本は、120%程になります。
ただし、いずれも円に転換しなければ、実質的に為替リスクはありません。
さて、話を戻すと、私は、赤坂商店(仮)の財務体質、資金繰り、
設備の状況等から、この節税策は時期尚早だと判断しました。
オペレーティングリースを検討してもよいのは、
自己資本比率が70%程度、キャッシュが潤沢にあり、
あらゆる税務対策を実施して、他にもうやることがない、という会社だと思っています。
赤坂商店の自己資本比率は、50%程度と決して低くありませんが、
キャッシュが潤沢にある状況ではありません。
また、設備は、全体的に老朽化しており、改修、修繕が必要な個所もあるはず、なのです。
「赤坂社長、設備投資など、本当にもうやることはないのですか?」
「はい、もうやることは、ないですね。
現場からも、~してほしい、という意見はあがってきていません。」
本当かな?ということで、近隣の支店長に話を聞いてみました。
「支店長、いま何か、困っていることはないですか?
設備が古いとか、補修、修繕してほしいとか、会社からも言われていませんか?」
「はい、言われています。でも、とくには・・・・」
執務室のなかに入らせてもらいます。
「このエアコン、ずいぶん、年季が入っていますね。」
「あぁ、これですか、これは、もうほとんど使い物になりません。」
「この冷凍ショーケース、ボロボロですけど、何年使ってるんですか?」
「あぁ、これは、いつだったかな、だいぶ長いです。
すぐに霜がついちゃうんですよ」
「玄関前のアスファルト、ボコボコじゃないですか。」
「ここは、お客様から、よく指摘をうけます。
台車を使うんですが、ボコボコなので使いづらいと・・・」
「この看板、いつのですか?
他店の状況とか、だいぶ、古い情報じゃないですか?」
「言われてみれば・・・」
こんな感じで、補修、修繕するところが、ゴロゴロ見つかります。
アスファルトの補修は、修繕費です。
エアコン、什器備品等の入れ替えは、
即時償却を使えば、一括経費になります。
お金の支払いは伴いますが、商売をしてゆくうえで、あるいは、
従業員の労働環境、作業環境を改善する、という意味では、必要な投資です。
どのみち、早晩、投資が必要であるならば、
利益が出ている今期にやってしまえば、よいのです。
再度、支店長に質問します。
「支店長、車なんかは、必要じゃないんですか?」
「あ、はい、ライトバンがあると助かります。」
これも、中古4年落ちで買えば、減価償却費をたくさん計上できます。
期首に4年落ちの車を買えば、買った年に、全額が減価償却費にできます。
期の途中からだと、月割りで計上することになるので、全額は無理です。
それでも、来期には全額減価償却費として計上できます。
現地、現場に行けば、何かしら節税のヒントが見つかります。
この意味で、決算対策は、もうはまだなりなのです。








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