やはり前回同様「女性と富」の会議で会った人達の話である。
大富豪と言われる人達の子弟は贅沢な生活、実社会から隔離された生活をおくることになる。それが往々に彼らの成長いにとって弊害や不都合をひきおこす原因であることを認識する親たちは、あれこれと対応策を講じるのである。
メディア王だった人の令嬢は著名な作家になったのだが、こう述べている。「父から、うちは貧乏だと言われて育った。大きな家に住んでいるし、5人もお手伝いさんがいるので少しおかしいとは思ったが、ともかく父がそういうので自分も貧しいと思い込んでいた。おかげで、あらゆる階層の人と友達になれたから、それはそれで却ってよかった。」
彼女が育った1950年代の南部で黒人と遊んでいたというのだから、親としてはかなりの英断だ。ところが「金銭教育の方は全くされず、いろいろ騙されたけれど騙されたことすら分からなかった」と言っていた。
前回も書いたようにアメリカでは、女性を「お金のことでわずらわせるのはいけない」という伝統的な社会風潮があり、結婚後夫に資産をとられてしまうケースが後をたたない。だから娘を持つ親は「どうしたものか」と悩み、賢明な人は熱心に金銭教育を施すのである。あるファミリー企業のオーナーには4人の娘がいたのだが、その長女は「家業につけとは言われなかったが、お金の訓練はきっちりされた」と話してくれた。
結局、彼女はファミリー企業に参加することになるのだが、妹達は専業主婦、でもみんなお金にはめっぽう強い。彼女自身今度は自分の娘にしっかりと金銭教育をしているという。たとえファミリー企業に加わらないにせよ、株主としての責任は重大なので、その面からも「お金にしっかりした」子弟に育てる必要があるのである。さもないと企業の存続すら危うくなってしまう。