【意味】
利益の独占は、他人から怨みを買うだけである。
【解説】
この言葉の前段には「利は天下公共の物なれば、何ぞ悪有らん」とあります。
事業を通し社会貢献をしたお礼として頂くのが利益です。そしてこの利益に対して税金を納めるのです。
利益が多ければ国家の税収入も増えるわけですから、事業に励んで儲けを得ることは決して悪いことではありません。
しかし、このことは誰でも頭では理解できるのですが、その一方で利益の多い企業や個人に対して、
妬み心が抜けきらない国民的な感情があるのも事実です。
真っ当な商売で得た利益に対してもそうですから、そこに少しでも疚しさがある場合や
暴利を貪ると思われる企業の利益となれば、尚更妬み心は増幅されます。
順調な企業が足元をすくわれる原因は、自らの気の緩みだけでなく他者からの妬み心に起因しているケースも多いのです。
サンフランシスコの南西、サンノゼに部屋数160の豪邸があります。
1800年代にレバーアクションライフルで莫大な財を築いたウインチェスター家の相続人サラ・ウインチェスターの邸宅です。
夫と一人娘を相次いで亡くしたサラは、不幸の原因はウインチェスター銃で
殺された多くの人々の呪いだとする風評を信じました。
「銃販売の利益を投資し、休むことなく家を増築させることが唯一不幸から逃れる手立てだ」
という霊媒師の言葉を真に受けて、亡くなるまでの38年間休む間もなく造り続けた大邸宅です。
彼女を取り巻く人たちの死には陰謀説もありますが、負い目のある莫大な財産を抱えて、
女性一人が平穏・冷静に生きていくことは難しかったのかもしれません。
欧米には、莫大な財産を寄付したり財団を設立したりする資産家が多いですが、
無意識のうちにある種の防衛本能が働いているのかもしれません。
企業経営上で留意しなければならないのは「金の儲け方の品性」と「金の使い方の品性」です。
所得格差は日増しに拡大する傾向にあります。自由主義社会ですからある程度のものは致し方ないですが、
その格差が個人の努力で埋められないような時代になると両者の軋轢は必至です。
不公平感を産まない為にも、強者は品位のあるお金の儲け方・使い方を心がけることが大切です。
儲け方には一定の法律や商業道徳がありますが、使い方には制約がありません。
兎角「自分が苦労して稼いだ金を、勝手に使ってどこが悪いんだ?」となりがちですが、
制約やルールがない分「金の使い方」にこそ、他者からの妬みや批判が集中します。
成金と揶揄される人々は、この「使い方に品性のない人」であることを忘れてはいけません。
地球を池に例えるならば、金儲けの上手な人が贅沢な生活をするということは、
池の中で盛んに泥を掻き混ぜているようなものです。
地球という池の環境が何時まで耐え得るかわかりませんが、
2500年前に老子が説いた「無為自然」「柔弱謙下」の思想が、最近新鮮に感じられます・・・