仕事に励む社員の努力に報いるためには賞与が制度として必要です。年2回、賞与支給のこの時期にあわせて過去6か月間の勤務成績を評価し、得られた成績評語(S・A・B・C・D)を賞与の合理的分配に活かしてくださいと常々申し上げています。
「過去6か月の勤務成績を評価すると言っても、人が人を評価する以上、主観から脱却できない。客観的評価は難しいのではないでしょうか」と質問がありました。それでは評価における主観的とか客観的とかいう言葉の意味合いを考えてみましょう。
人事考課制度とかコンピテンシー考課における評価の対象が人(属人要素)であり、その人の能力や性格、資質や人柄、将来性などに焦点を合わせる考課法です。このような「人が生身の人を評価」する場合にはハロー効果(アバタもエクボ)が入り込み、どうしても評価が主観的になり、結果として情緒的判断の域を脱し得ないのです。このハロー効果は人が生き物、例えばペットの猫や犬と接するときにも顕著に現れます。
これに対して、評価の対象が「生き物」ではない「無機的な物質」もしくは「結果として得られた物的なもの」であるときには、人は十分客観的に評価することができます。
会社のあらゆる仕事は、組織によって遂行処理されます。この場合の仕事は、上長からの指示命令の形で割り当てられ、そのプロセスにおいて、監督者によって管理・監督・指導・調整を受けながら遂行され、その成果が審査されて、上長への報告で完結します。
このように考えれば、仕事の進捗は必ず職場の監督者によって審査されることになります。この管理監督者つまり直属上司こそが、会社の中で部下の「仕事の進捗状況」を、具体的に「物的なもの」として捉え評価できる最高の能力者なのです。
具体的には、箇所長(課長)が成績評価基準書の5つの評価要素を構成する4つの着眼点ごとに良=10点を中位に尺度法で点数評価し(評価粗点)、結果を集計することによって、評価責任を果します。この点数によって示される序列と点数間隔は、その課の中では十分客観的であり信頼に足るものだということができます。
しかし個々の評価者の固有の癖、例えば評価者のもっている甘い辛いとか、分散集中などの評価誤差までは排除できません。他課の点数評価の結果と併せて、等級ごとに集計するためには、これらの評価者の癖に由来する誤差は他の人、すなわち間接の上司(部長)の手によって課相互間に存在する問題として調整してもらいます。
成績評価制度におけるこの後半の手続き、課相互間の調整段階では、調整者(部長)が評価者(課長)の付けた点数による課内での序列と点数間隔が守られた上で、投影法によって他課との調整をします。それは定められた調整手続きによって慎重に進められ、完成した成績調整報告書は人事部に提出されます。人事担当長はそれを必要にして十分な評語決定手順によって客観的な評語分けに進み、等級ごとの評語別分布を確定します。