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人事・労務

第43話 上司の熱血指導で新人が辞めてしまった

「賃金の誤解」

会員企業の聡明な社長が相談したいと賃金管理研究所に来られた時の話です

 実は今年、苦労して3名の新人が採用できました。そのうち2人には現場の仕事を覚えてもらいたかったので、一番仕事ができる課長に二人を預けました。
 私としては2人の成長を楽しみにしていたのですが、3か月もたたないのに、その2人が相前後して辞めてしまいました。そこで退職理由を聞くと「給料に不満はない。ただ、やっていく自信が持てなくなってしまった」の一点張りでした。

 そこで課長を呼び、事情を確認してみました。そこで聞いた課長の答えに私は唖然としました。
 「二人とも覚えが悪くて使い物にならない。何とか覚えさせようと少し説教したら、反抗的というのか、返事もせずに作業を中断してしまったので、叱咤激励のつもりで多少強い口調で叱責しました。自分たちはそうして仕事を覚え育ってきたのだから。今の若いものは礼儀も知らなければ、我慢もできない」。と自己反省のひとかけらもなく、平然と「新人は無能だった、辞めて当然」と言い切るのです。

 学校に頭をさげ、やっと採った新人です。すぐに仕事ができる訳がないじゃないですか。そんな貴重な人材を採るための苦労が分かれば、もう少し違った教え方があっただろうにと、悔やまれてなりません。もしかしたらこうした上司の行為をパワハラと言うのでしょうか。

 この課長は何でも自分からやる几帳面で真面目なタイプです。会社には欠かせない上級社員なのですが、組織を束ねて、部下を育てる仕事には向いていないことが今回の出来事ではっきり分かりました。今後この上級社員をどのように処遇していくべきでしょうか。
 
上記の相談に私はコンサルタントとして、以下のようにアドバイスしました。
 こうした行為がパワハラかどうかは別の判断として、社長の無念さ、そして若い部下との関係を大切にできない上級社員をそのままラインの管理監督者として置いておくわけにはいかないとの判断は正しいと思います。
 
 その上級職社員には管理職としての適性には問題があるが、その知識・経験は会社にとって貴重だということですから、まずは ①ラインの管理職からは降りてもらう。ただし責任等級は変えない。②現在の課から離れた部署(なければ作ってでも)に移ってもらう。そして ③現業をサポートできる立場で、必要な時には社員と客先にも同行できる専門職として活躍してもらえるようにする。④呼称については、ライン課長と紛らわしい呼称は避ける。
 
 社長は帰社後、速やかに①から④の施策を実行し、呼称については技術担当主査としました。その人事異動の結果、管理監督者の仕事(煩わしさ)から解放された上級社員の彼は今まで以上にイキイキと立場をわきまえた専門職として仕事に励んでいると報告がありました。
 
 最後にパワハラについての判断ですが、2012年1月30日、厚生労働省は「職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。上司から部下に行われるものだけでなく、先輩・同僚間、さらには部下から上司に対して様々な優位性を背景に行われるものも含まれる」という定義を発表しました。今回の出来事がパワハラにあたるかどうかの判断は読者のみなさんにお任せしたいと思います。

 

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