「仕事のすすめ方」
◆仕事を円滑にすすめる「コミュニケーションのスキル」◆
前回、コミュニケーションにおいて言葉遣いは大変重要なスキルと申し上げました。今回は、コミュニケーションにおける自分の行動は、相手の心に届くだけでなく相手の行動をも動かすことが出来る例です。
まず、仕事編。地下鉄からJRの駅に向かう間にあるトイレの話です。最初に気付いてから3年以上経ちますが、女子トイレの個室がとてもきれいに掃除されています。
新しいトイレというのではなく、どちらかというと内装は古いと思います。でも丁寧な仕事ぶりが伝わるお掃除の仕方です。この個室のお掃除をなさっている方が、隅々まで毎回力を入れて丁寧に磨かれているのが分かります。新しいとは言えない個室の中の備品ダストボックスも、時間をかけて磨いたのだろうなと思うほどです。よい意味で気になるので、年に何度か利用しますが、いつもきれいです。「いつもきれいに使っていただきありがとうございます」のような張り紙はありません。でもそのような張り紙は全く必要なし。何故なら、その方の仕事ぶりは利用者に確実に伝わり、誰もがきれいに使っているという雰囲気だからです。私はその方にばったり会えたらいいなと思っています。その方のお陰で、私は自宅のトイレ掃除に向かう気持ちが変りました。掃除時間も少し長くなりました。ばったり会えたらそんなお礼を言いたいと思っています。人の心を動かす行動は一心にというのが秘訣なのではないでしょうか。以前、本でディズニーランドのトイレの便器には、それぞれ名前がついているということを感心しながら読みましたが、仕事は愛情を持って本気でする・楽しんですると、その先の相手に伝わる・相手の行動を変えることにも繋がると改めて実感しました。コミュニケーションには、言葉を介するコミュニケーションと言葉を介さないコミュニケーションがありますが、これは後者のよい例です。
次にプライベート編。知人から聞いた一枚のハガキの話です。知人が知り合いの男の子の誕生日にディズニーランドのチケットを贈ったそうです。贈ったことさえ忘れていたある日、その男の子から「僕は、今東京ディズニーシーにいます」という絵ハガキが届いたとのこと。少ない文字であっても、「今」という言葉があることで、そこでの楽しさが一杯伝わってきてとても嬉しかったと知人が言いました。私は「今の楽しさ」を伝える行動の大切さを教えるご両親の姿も同時に見えてきました。ディズニーシーの片隅でミッキーマウスのポストカードと筆記用具を渡すご両親の姿が見えるようです。タイミングを逃さず現場で自分の気持ちを伝えることを教えるのはとても大事と感じます。そのお子様はこのような教育の積み重ねの中で、コミュニケーションにはタイミングも大切と体感していくに違いありません。きっと社会人になる頃には、コミュニケーション能力の高い方になるでしょう。昨今の若い方々のコミュニケーション不足は、親の責任も一部にあるのかも知れません。コミュニケーション能力はスキルで解決できる面も大いにありますから、大人が機会を逃さずこのご両親のように丁寧に教えることが必要と感じます。
同じようなことが、会社の新人さんと先輩・上司との関係にも置き換えられます。年々、デジタルネイティブと言われる世代の人が増えてきますので、コミュニケーション能力不足は今後の会社の業績を左右するかも知れません。中でも前述のハガキのような細やかな教育が社内で見逃せないポイントになるでしょう。ちなみに私は知人の話を聞いてから、ポストにハガキを入れる回数が今までより増えました。コミュニケーションは見えない相手にまで連鎖する力を持っています。
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