「上手な話し方」
◆仕事を円滑にすすめる「コミュニケーションのスキル」◆
皆さんは「にこやかに話す」という言葉を読んで「カンタン!」と思いませんでしたか?ところが、これは本当に難しい。話し手の笑顔が本物、また本気になっていないと気持ちの揺れ(緊張や不安など)が原因で心からのにこやかさを維持することはできません。
私は時折、一人二人、通りを歩いている時ふいに素晴らしくにこやかな表情の方とすれ違うことがあります。内面の大きな喜びが笑顔という形を取ったと思えるような表情です。よほど良い事があったのだなと無関係な私まで幸せな気持ちになります。
でも内面の喜びが原因で作られる心からのにこやかさの頻度は残念ながら低いので、これではコミュニケーションとして話す時には使えません。人と会った時「すでににこやか」が絶対条件となります。
では、どのようにしたら常に「にこやかな表情」でいられるのか。人はそれぞれ自分流があるでしょうが、私の場合のやり方を三つ挙げてみます。
一つは自分の顔の表情筋のどこをどのように動かすかを知っておくことです。まず鏡の前で、にこやかな自然の表情を探してください。「これ!」と思えたら、その時の筋肉の止めた位置を感じてください。感覚としてはかなり口を横に開いている印象を持ちますが、鏡の中の自分の表情はそれほど笑っていません。むしろ想像よりにこやかさは小さいことに気がつきます。この止めた位置を維持しながら話すと、相手には「にこやかに話をしている」という印象を与えることができます。
それから、長くにこやかさを維持するためには自分をよりよく見せようという概念を捨てること。(視覚的にも能力的にも)長く維持するこのがとても難しいからこそ、自然でシンプルな自分で臨むのです。
あなたがにこやかに話そうとする気持ちの延長線には「楽しそうに話す」がリンクしています。もちろん、聞き手に伝えるために話すのですから、聞き手が主役のスタンスを守ります。あなたが聞き手だとしたら、話し手がにこやかに楽しそうに話すのと、無表情で話すのとでは、どちらが心地良いでしょうか。でも、人は自分をよりよく見せたいのも真実です。自分をよりよく見せる努力は、いつでも周囲の人、社会、本、映像など日常生活からの学びを怠らないことではないでしょうか。どうぞ、学びを怠らない自分を楽しんでください。
次は、にこやかな表情で話す憧れの人、お手本となる人を複数持つです。ひとりではなく複数がポイントです。なぜなら、イメージとしてあなたがにこやかに話す人に囲まれるからです。ライバルは多いほどレベルの高い戦いができます。男女別、年齢別、職業別…。あなたは今、何人の憧れの人、お手本となる人を挙げられますか?文字数の関係で私の憧れる人・お手本となる人を一人挙げると、宇宙飛行士 向井千秋さんのお母様の内藤ミツさんです。内藤さんについては「娘は宇宙飛行士」(主婦の友社)の中にも書きましたが、現在、90歳をむかえますが、15年以上前に初めてお目にかかった時のことを今でもハッキリ覚えています。二階から階段を降りていらっしゃったのですが、その足音のテンポがとても軽やかで、全身を拝見する前からにこやかな表情の予告を感じました。二、三秒後、「あーら、いらっしゃい」という声とともに陽射しを身に受けたようなにこやかな表情が目の前にありました。そのときから今までずっと、内藤ミツさんは私の憧れの人・お手本となる人のナンバーワンの方です。お目にかかるときは、そのにこやかな表情から今日はどんなお話が伺えるのかと、いつもワクワクして待つ自分がいます。
最後に、仕事中どんなときもにこやかさを崩さずにいられる源は、準備を周到にすることです。「準備万端の仕事をすること」 → 「にこやかな表情」は、良い方向のスパイラルになります。そのめぐりが心の余裕につながり、そのままにこやかな表情となって聞き手に伝わるのです。