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第73回「門外漢の外部招へい社長だからできる当該企業の常識、業界常識を変える経営」ビジョナリーホールディングス

深読み企業分析

ビジョナリーホールディングス(9263)はメガネスーパーを運営する会社である。メガネスーパーは過去にメガネの安売りで成長したが、さらなる価格破壊による競争激化で2000年代後半から赤字が続き、倒産寸前まで行った会社である。しかし、ファンド主導で2010年代半ばに招聘した現社長の星崎氏が見事V字回復を成し遂げた。同氏は大手商社を退職後、数社の小売業を立て続けにV字回復させた実績があり、ファンドに請われてメガネスーパーの立て直しに参画した。同氏の立て直し手法の特徴は、「スピード経営」、「社員の意欲活性化」、「業界慣習にとらわれない独自のビジネスモデル」である。
 
 
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まずは、スピード経営。何事もいいと思えばやってみることをモットーとする。やる前に、こんな問題がある、あんな問題があるとネガティブサイドのやらない理由を並べても仕方がないと考え、まずはいいと思ったら行動してみる。そして、不都合があれば、躊躇なく改善していけばいいという考え方だ。
 
氏は著書「0秒経営」の中で次のように述べている。現場に自分の考えを伝え、「どうしたら黒字にできるか」彼らと一緒に考え、行動した。そのうちに彼らも「こんなことをしてみたらどうだろう」とアイディアを出すようになった。すかさず、それを試す。失敗する。イチローでさえ、4割は打てない。私たち凡人の考えることは、ともすれば半分以上は失敗する。失敗するのは当たり前だ。
 
しかし、「やってもだめなんだ」ではなく、「どうしたらうまく行くのだろう」と軌道修正して、またチャレンジする。このサイクルを毎日、超高速で回した。やがて、結果が出始めた。「自分たちはやれる、売れる!」という経験が積み重なって行く。負け癖が染みつき、しらけていた店舗に、熱が生じた。と述べているが、まさにこれが社員の意欲活性化ということである。もちろんこれはすべての業種に使える手法とは限らない。社員が顧客と相対する小売業だからこそ、威力を発揮する手法であるとも言えよう。
 
そして、それらの内部要因に加えて、対顧客ではビジネスモデルのブラッシュアップを行った。メガネ業界は2000年代初旬の廉価販売モデルの隆盛で、顧客単価が大きく下がり、同社の収益性も大きく悪化した。それに対して同社が取った手法は、検査時間を長くして、本当に個々の顧客にあったメガネを作る半オーダーメイド型だった。また、そのようなニーズが大きい40代以上の顧客に対象を絞ったことも功を奏した。その結果、客単価が大幅に上昇し、V字型回復を成し遂げた。そして、その後も着実に既存店売上を伸ばし、着実かつ急速に成長する会社に生まれ変わりつつある。
 
 
有賀の眼
 
ビジョナリーホールディングス社長の星崎氏はファンドが企業立て直しのために招へいした社長である。最近、このようにファンドが招へいした社長によって生まれ変わったようになった会社が目につく。
 
私が見ている中でも、カチタス、スシローグローバルなども同様にファンドが招へいした経営者が、企業を高成長軌道に乗せた例である。
 
また別の例では、外部から経営者をヘッドハンティングしたケースでは物語コーポレーションがある。これは他社での外食事業の経営手腕が買われた例である。
 
また、創業経営者もしくは実質的な創業経営者がけん引して勢いのある会社もある。寿スピリッツ、ニトリ、メディアドゥなどはまさにそんな会社である。
 
それに対して、サラリーマンが会社のトップに上り詰めたケースではすごいと思う会社は少ない。もちろん、ないわけではないがその場合には、すでにビジネスモデルが出来上がっていて、過去の延長線上でも問題のないケースが多い。
 
これは今は時代の変化が激しく、激しいだけではなく、過去ほどは成長の芽が少ないためではないかと考えられる。その意味において、会社自体がどんどん変わらなければ、成長していけないほど厳しい時代と言えよう。そんな中で、会社の階段を上がってきた経営者がその会社の方法論、考え方、仕組みを大胆に変えるのはかなりの困難を伴うのではないかと思われる。なぜなら、その社長はその会社のやり方に最も適応力があったゆえ、社長に上り詰めることができたという事実があるためである。
 
この辺りは、次のトップを考える時、一つの選択肢として頭の片隅にでも置いておきたい考え方と言えよう。

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