menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

戦略・戦術

第129話 生命保険は、有効に活用しなさい!

強い会社を築く ビジネス・クリニック

1.全額損金タイプの生命保険が、復活してます。
 例年2月~3月、生命保険の代理店会社は最大の繁忙期に入ります。年度末に生命保険に加入し、利益が出過ぎないようにしよう、という経営者が多いからです。そのお気持ちはよくわかります。では実際に、どのようなニーズが多いのか、代理店の経営者の方にお聞きすると、
「なんでもいいから、すぐに〇百万円くらいの保険に入りたい!」
というような声が多いそうです。
“目先の節税目的だけで、保険の中身とか、あとのことを、何も考えていないパターンが多いんですよね。”というわけです。
一方、節税したい経営者の声に応える保険販売員も、真のニーズがわかる方が少ないです。
「これで〇百万円くらいになります!」と、言われたまんまに提案します。
で、互いによく考えないまま、契約が成立してゆきます。そんな場合の多くは、半分損金タイプの商品になっています。全額損金タイプはもうなくなった、と思い込んでいる経営者が多いのです。生命保険に関しては、このようなミスマッチをよくお聞きするのです。
いわゆる逓増定期保険の全額損金タイプがなくなったのは、2008年です。当時、年度末に契約が激増している状況を、当局が目をつけ、網を敷いたのです。その印象が強く残っているのだと思います。しかし、今はまた、平準定期保険での、全額損金タイプの商品が、外資系だけでなく、国内生保からも、出ているのです。ニーズがあれば、サービスは生まれます。まさに、いたちごっこなのです。保険販売員の方が進めてきたら必ず、“それは全額損金タイプですか?”と、聞いてください。
 
2.利益の先延ばしだけでなく、出口を考えておく
 ただし、入口だけ考えて、出口を考えないのも困ります。ほとんどの場合、年度末あたりでの生命保険加入は、節税が目的です。なので、返戻率が高いタイミングで解約することになります。解約すると、返戻金が入ります。その返戻金は特別利益となり、課税対象になります。何も手を打たなければ、結局は課税されて終わりです。これでは、生命保険に加入することで、利益発生を先送りしたものの、意味がありません。
 だから、解約する際の出口をかんがえてほしいのです。返戻率が高いタイミングは、5年目~7年目など、一定の幅があります。加入時点でわかっているはずです。その幅のなかで、生命保険をいつ解約して利益を発生させるか、と同時に、その利益を相殺させるため、どのような費用を発生させるのか、を考えてほしいのです。役員の退職金、建物塗装などの高額の修繕費、記念式典などの高額出費、ロゴマークなどのデザイン見直し、等々。5年後~7年後あたりで、大きな費用発生を計画できることは、いくつもあるはずです。出口を考えるとは、このことです。生命保険は、利益の発生時期をコントロールできる、有効な節税アイテムなのです。入口の節税だけでなく、改めて利益発生する際の、出口対策をして初めて、生命保険を有効に活用した、と言えるのです。
 
3.保険金の「年金受け取り払い」をご存知ですか?
 一方、当然ながら、生命保険ですから、死亡時の保険機能もあります。死亡時には3億とか5億など、それなりにまとまった金額の死亡保険金が発生します。その保険金の受け取りに関しても、対策が必要です。一気に数億円もの特別利益が、突然発生するのです。もちろん、法人税を課税されます。5億円の死亡保険金が入ると、2億円弱は、法人税が発生します。税金のことなど詳しくない保険販売員だと、
“死亡時の保険金が5億なので、そのときには、5億の借金が返せますよ。”
などと、平気で言います。大間違いです。
ここで活用したいのが、死亡時保険金の「年金受け取り払い」です。
要は、保険金を分割して受け取る仕組みです。保険会社によって異なりますが、最高30年くらいまで、分割して受け取れます。
この「年金受け取り払い」は、契約後にだけできる、特約条項です。契約時には、できないのです。ただし、手続きは簡単で、必要事項を記入して捺印すれば、1日で完了します。
ところが、この「年金受け取り払い」のことを、知らない保険販売員がまた、多いのです。いわゆる、保険屋のおばちゃん、おっちゃん、のレベルでは、ほとんど知りません。売ることしか考えていないので、契約後にだけできる特約など、どうでもよいのです。
“そういうのは聞いたことがないですね。”
“うちではそれはないと思いますよ。”
などと、言ったりします。そんなことはありません。あるはずです。
“よく調べてください。”と、突き詰めてほしいのです。
 
4.保険金を受け取る時期には、コントロールできる幅があります
最後に確認しておきたいのは、死亡時保険金は、支給手続きを申請してから受け取るものだ、ということです。被保険者が亡くなったからといって、勝手に振り込まれることは、ないのです。つまり、保険金をいつ受け取るのか、ある程度のコントロールできる幅がある、ということです。保険会社も、できることなら高額の支払いは先延ばしにしたいのです。かといって、放置しすぎだと、金融庁の審査で保険会社は指摘を受けることにもなります。まずは、保険金の受け取りは、ある程度先延ばしにすることができる、ということを、知っておいてほしいのです。それがわかっていれば、死亡時保険金が発生する、という不測の事態があり、「年金受け取り払い」にしていなくても、利益コントロールの判断が、冷静に下せるのです。
 
いくつか申し上げましたが、生命保険はリターンのない現金流出の防止に、有効なアイテムです。活用する以上は、その内容や特性を良く理解し、有効アイテムをムダ使いしないように、してほしいのです。

 

第128話 決算対策次第で、残るおカネは変わってきます。前のページ

第130話 銀行提案の相続対策にご用心を!次のページ

関連セミナー・商品

  1. 「第37期 後継社長塾」

    セミナー

    「第37期 後継社長塾」

  2. 社長の財務戦略

    社長の財務戦略

  3. 井上和弘『経営革新全集』10巻完結記念講演会 収録

    音声・映像

    井上和弘『経営革新全集』10巻完結記念講演会 収録

関連記事

  1. 第167話 コロナ禍で見る優勝劣敗

  2. 第72話 オリンパス事件について考える

  3. 第146話 意外と知らない税務調査

最新の経営コラム

  1. 朝礼・会議での「社長の3分間スピーチ」ネタ帳(2024年5月1日号) 

  2. 第59回「始まりと終わり」

  3. 「日本版」はどう進展するのか?

ランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. 戦略・戦術

    第218号 「わかりやすさ」を一番に求める消費者
  2. マネジメント

    時代の転換期を先取りする(13) 近代資本主義の環境を整える(フランス革命)
  3. 社員教育・営業

    第74講 クレーム対応成功の法則はまず『親身的対応7つの手順』で運ぶこと(2)
  4. 戦略・戦術

    第118話 環境利益 環境赤字
  5. 製造業

    第258号 営業部門と製造部門が一体となる「全社的5S」K社の事例
keyboard_arrow_up