お客様:25歳くらいの男性(建築業・話し方が少し粗暴)
お申し出方法:お電話
お申し出日時:月曜日の朝10時
受け付けた窓口:携帯電話会社の故障に関するコールセンター
商品:1年半くらい前に機種変更した携帯電話
主なお申し出内容:
お客様からのお申し出は、「ある日突然、毎日使っている携帯電話の電源が入らなくなったので、急いでショップに持って行き診断をしてもらったら、水ぬれによる故障が発生しているということでした。特別調査をし、その結果、また水ぬれによる故障と認められた場合、3万円以上の費用がかかる特別修理か、機種変更(つまり新しい携帯電話に買い替える)の対応になるとのことでした。自分は水ぬれをさせた覚えがないと言ったら、機械内の水ぬれ反応の印を見せられました。その覚えがないので納得できないでいると『水ぬれは、汗や、小さな雨のしずく、湿気からくる結露などでも発生しますので』との説明を受けました。『そんな、小さな水分で水ぬれ反応になることは、製品そのものに問題があると思う』と言ったら『雨の中で携帯を使いませんでしたか?』と聞かれ、まるで疑われているような対応でした。とにかく、この故障は覚えがないので、製品が自然故障したということになるので、新しい携帯電話に変えてほしい。それが無理なら無償修理をするべきだ。」
というご希望から、引き下がってもらえない。
求めたいアドバイス:
説明したルールには問題はないのですが、いったいどのように説明をしたら、納得をして引き下がってくださるのでしょうか?
アドバイス:
(1)消費者感覚をきちんととらえて、その感覚を認めることです。「小さな水分で水ぬれ反応になることは、製品そのものに問題があると思う」。これは、率直な消費者の声だと思います。企業がそう言われても仕方がない事を、きちんと言葉で認めてください。無理に抵抗する必要はありません。会社のダメなところ、製品のダメなところ、表示の行き届いていないところはきちんと、言葉豊かに認めましょう。
(2)但し心配しなくても良いのは、会社のダメなところ(違法ではないレベルで)を言葉で認めたからと言って、すべて希望の対応をしなければならないというものではありません。
(3)もうひとつ、覚えておくことは、『相手が納得する』事がベストですが、事例によっては『納得してもらえないけど、あきらめてひきさがっていただく』事も、解決の着地としては有り!ということです。消費者の感覚で言えば、納得してもらえるはずがない事を納得してもらおうとする必要はありません。あきらめていただきましょう。
(4)「水ぬれは、汗や、小さな雨のしずく、湿気からくる結露などでも発生しますので」なんてことを消費者に納得をしていただくのは、企業の傲慢です。つまりそんなちゃちい製品を商品として販売するなと言いたくなる気持ちは、当時者としては率直な気持ちです。
(5)しかしながら、企業のルールを理解してもらわなければならないという問題があります。
つまり、企業のルール以外の対応はありえない事をあきらめてもらわなければなりません。
(6)あきらめてもらう前に、やらなければならないことがあります。言わなければならないことがあります。それは、このお客様が、突然携帯電話が使えなくなった焦り、困惑、お困りの気持ちをきちんと受け止めなければいけません。
(7)まして、このお客様は建築業ですから、炎天下での仕事もあることは想像に難くありませんから、汗もかくことも当然でしょう。さらに、炎天下ではない軽く雨が降る日も仕事をすることがあるでしょう。また、建築には器具の汚れを洗浄をすることもしょっちゅうでしょうから、多少の水しぶきはどこかで受ける可能性があることを察することができます。
(8)そのように外で仕事をしている人の連絡ツールは、携帯電話しかないわけですから、原因はどうであれ、携帯電話が使えなくなるということの焦りは、立場の異なる人とは比べ物にならないのではないのでしょうか。
(9)そんなお客様の思いをしっかりと言葉にして、相手の言い分を認める事から始めましょう。企業のルールを認めてほしいなら、お客様の状況や思いを認めることからはじめましょう。
(10)そこでお客様の言い分に対して「突然に携帯電話が使えなくなった状況とそのお気持ちを思うと言葉もみつかりません。まして、建築のお仕事でしたらご不便をおかけすることを推し量ることもできます」と相手の困惑を認める言葉を言いましょう。
(11)次に、「はずかしながら、携帯電話は、汗や、小さな雨のしずく、湿気からくる結露などでも水ぬれ反応となり、使えなくなることもございます」と、その性能は、消費者を安心させるに及んでいないことを認めながら説明をしましょう。
(12)最後に「今回の対応としましては、お客様費用負担で特別修理をしていただくか、機種変更をお願いすることになります。」と企業が対応できるものだけを伝えましょう。
(13)それでも引き下がってくださらないことが多いと思いますが、その場合は、(10)と(12)を繰り返すということになります。そして、(12)の方法しかないことに気づいていただき、納得はしてくださらなくとも、あきらめていただくことを目指しましょう。
(14)あきらめてくださったとしても、このお客様は、つかみどころのない苛立ちで、あなたの会社を批判し悪い評判を流すかもしれません。でもそれはこのお客様の率直な思いです。その気持ちを受け止め、ただひたすらかみしめましょう。そして、時間をかけても、納得をしていただける対応を整えていきましょう。
※用いた事例は、実際事例ではなく、よくある事例を基本にして、講師が、独自に作成した事例であることを
ご了承ください。