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社長業

Vol.131 「何%の幹部が自社商品を愛していますか?」

作間信司の経営無形庵(けいえいむぎょうあん)

 一昨年から続く金融ショックで、多くの国の経済が壊滅的な被害を受けている。そうなれば、これまでの主義主張をあっさり捨てて「Buy American」などと、声たからかに謳う国も出てきた。
 
 本来であれば自国製品に誇りを持っていて当たり前だが、決してそうはなっていなかった。
 
 わが国もあまり人のことは言えない。自治体でさえ主力工場がある自動車メーカーの車を何とか買ってもらうために10万円の補助金を支給したりしている。
 
 また不景気とはいえ欧州ブランドは高額でも相変わらず根強い人気を保っている。
 

 大きなことの是非を問うてみても直接自社の経営に関係はないが、「自社商品に自信とプライドを持っているかどうか?」は、これからの業績に大いに影響を与える。
 
 それも特に中堅から幹部社員のみんなが「どう思っているか?」が、鍵になる。
 
 やる気をもって入社し頑張っていると、先輩が食事のときや仕事帰りに、またクレームが起きたときなどに、悪気もなく「自社製品の悪口や不満」を口にする。ましてや我々は論理明解に欠点を指摘されると、なんとなく説得され、言った本人も偉くなったような気になるし、頭がいいように錯覚する。
 
 それを若い社員がずっと聞いていると先輩に同調し同じようなことを口走る。聞いているうちに自分で考えたように錯覚する。そして売れないのは自分の責任でなく商品が悪いからと責任転嫁してしまう。そんな気持ちでは、お客様に説明しても売れないし、一言「高いな」といわれれば、「はい」とは言わないが、それ以上商談も進めない。
 
 お客様も、売っている人が自信満々でないのに買うわけもない。
 

 ではどうすれば「社員が自社商品や自社のサービス、会社自身に誇りやプライドを持つようになるのか?」ここが一番知りたくなる。
 
 全ての根源は「お客様から、ありがとう」と、言ってもらえるか、にかかっている。まともな社員はみんな人の役に立ちたいと思っている。変な話だが「儲かる儲からないには、あまり関心がない」。結果的に儲かっているのであって、若手が下手に儲けようとすれば目先に走り失敗をするのがほとんどである。儲かる事業構造をつくるのは経営陣の仕事であり、その責任を部下に振ってはいけない。
 
 だから社長が、本気でお客様のために経営努力を惜しまないことが最初である。口でどんなにCSを言っても、ホンネが利益最優先であれば社員は心が離れてしまう。
 
 次に、メーカーであれば特に、「自社商品をどうこだわって造っているかを、実地に体験させ体に覚えさせること」である。原材料の生産者にも会わせたり、作る苦労を味あわせたりして、この商品一つのために多くの人が汗を流していることを自分の目で足で確認させることである。DVDで何度見せても話を聞かせてもダメである。体験に勝るものはない。
 
 販売店の社員やパートさんでも扱いメーカーに行かせて工場見学をさせ開発者の苦労話を聞かせ、修理品をさわり商品に詳しくなることが近道である。カタログにない説明ができ自信をもって推奨するとお客様も迷いが消えてしまうから不思議だ。駆け引きではない気持ちが伝わるのだろう。
 

 これから新人君が入ってくる。研修でキッチリ自社商品に惚れるほど触れ合う時間を取ろう。詳しくなれば愛着がわく。また、お取引先の新人君がいたら自社に招いてウチの商品を通じて業界のことを良く覚えてもらおう。最初に見た商品サービスが一生頭から離れないのは、動物も人間も一緒だ。
 
 商品に惚れる前に前線に出してしまうと先輩色に染まってしまう。先輩にも特に影響力のある幹部にも会社への批判的な発言、悪口を言わせないように手を打とう。
 
 「批判があるのであれば、代案、対策付きで話してもらおう。良ければ素直に実行すればいい」それでもダメなら、切るしかない。
 
 「Buy 自社商品」。
 
 4月に、自社商品と業界に、命を捧げた創業会長に面談に行ってくる。目立たないが世界一だ。

(2009年3月18日配信)

 

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