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第42講 事例を使ってクレーム対応の間違いと、最善の対応を学ぶ  動物病院編(2)

クレーム対応 実践マニュアル

いつも来院している一般的な普通のクライアントさんなのですが、薬のお渡し間違いがあり、大きなクレームになってしまいました。実は、その飼い主さんには、前回も薬を間違えており、そのときは口頭でお詫びし二度と間違えないようにと約束したにも関わらず、今回また間違えてしまったのです。 間違えてしまったことは本当にこちらのミスですし、ご立腹であるのももっともだと思っております。信頼を取り戻し、今後も同じように通っていただくにはどのような対処をしたらよろしいでしょうか?
(※出典:インターズー刊 Q&A解説「絆」が求められる時代の動物病院マネジメント)
 



≪解決へのアドバイス≫

(1)薬の間違いという本来、あってはならないミスを二度も発生させたのですから、通常のお詫び方法では解決はできません。それを、その場で謝って終わらそうとしませんでしたか?その横着な対応がさらに解決を遠退けるのです。まして、再来院の意欲を削ぐのです。

(2)もう一つ、このような重篤なミスをした飼い主さんに、本気で『今後も同じように通っていただくという願い』があり、その思いをかなえたいのなら、相手の希望に対して長い時間とお金をかけて際限のない対応をしなければなりません。なにしろ、この事例は2度の病院側のミスが原因なのですから。それができるなら、希望の着地もいつか訪れるでしょう。
率直に言えば、二度もミスを犯しておきながら『また今後も同じように通っていただきたいという思い』を持つことは、浅はかです。二度もミスをしたことによる、相手の心の傷や戸惑いを軽々しく考えることしかできていないと言えるでしょう。相手の思いが理解できているなら、そんな希望は持たないはずです。

(3)そんなことよりも先に、この場でやらなければならないことは、今回のミス、2度のミスを許してもらうことです。
そのために、絶対にやらなければならないことは
 1、二言の挨拶をし
 2、相手の思いや不満や怒りを聞き
 3、今後の再発防止策を改めてご説明する
という行いを、言葉豊かに、順番を間違わずに行うことです。

(4)ただ、今回は何と言われても病院側が100%悪いわけですから、事例1のような病院内でお詫びをすますことはできません。
対応の一例としては『このワンちゃんをかわいがっているご家族すべての方に、お詫びと、今後の再発防止策のご説明をさせていただきたい。』と、相手が求める前に発言することです。相手に『家族も心配していますので、家族にも説明をしていただきたいです!』と言われる前に、自分から積極的に提案することです。

(5)自分から提案したところ「それは、けっこうです!」と一度言われるかもしれませんが、もう一度くらいは食い下ります。『ご家族皆様の前で、再発防止策に取り組むことをお約束させてただきたいのです。』と少し、言葉を言い換えて食い下がります。それでも「けっこうです!」と言われたら、『ご要望があれば、いつでもまいりますので』と一言言って、引き下がります。

(6)結局、引き下がることになっても、飼い主さんの家でつまり、飼い主さんの陣地で、家族という大勢の前で、潔く謝罪をし、今後の約束を誠実に行うというその熱意に、飼い主さんの気持ちは揺さぶられてくれます。だから、「けっこうです!」と断られても良しとして、自分から提案をするのです。

こんな汗かき提案が、相手の上げたこぶしを下ろしてくれるのです。
※ただ、また来院して下さるかどうかは、気にしないことです。飼い主さんが世間にこの病院の悪い評判を流したくなる気持ちを最小限に抑えることに成功することから目指しましょう。

 

中村友妃子          



※用いた事例は、実際事例ではなく、よくある事例を基本にして、講師が、独自に作成した事例であることを
ご了承ください。

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