ビジネスの世界で、リエンジニアリングという言葉が、
もてはやされたことがあった。
リストラが企業の再構築であるのに対し、
リエンジニアリングは、
「経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報…)の利用効率を最大限に高めるプロセスの再設計」、
または、
「既存組織や機能をバラバラにして捨て去り、まったく新しいプロセスを描くこと」
をいう。
とすれば、別にリエンジニアリングという言葉は意識はしなくとも、
多くの企業が大なり小なり実行しているのではないか。
なんでも流行りものにはとりあえず反対するという歪んだ性格の私には、
なぜ「リエンジニアリング」が流行ったのかよくわからなかった…というのが本音である。
経営の生産性を高めるための「修正」の部分にスポットをあててみたい。
生産性とは「効果と効率の積」のことであり、
ここで重要なのは、「仕事の仕組みと優先順位づけ」である。
とかく見逃しがちなこの点について指摘したい。
およそ会社の仕事は、分類してみると次の三つに分けられる。
(1)
どうしてもやらねばならない仕事:
これをやらないと会社の存続が不可能になる、という類の仕事である。
メーカーが製品を作るのをやめたら、その会社が潰れるのは時間の問題である。
つまり、MUSTの部分である。
(2)
やるならやるにこしたことはないという感じの仕事:
実は、これが絶対的に多い。
膨大な数のレポート、書類、報告書作りなど、少なくと半分は体裁づくりのための作業であり、
なくしたからといって実害はない。
夜のつき合いや接待ゴルフなどもしかり。
(3)
不必要な仕事:
厳密にいえば、優先順位の観点から、排除するか、ないしは先延ばしした方が
全体の経営資源の有効活用につながるといった種類の仕事である。
こういう内容の仕事は、全体の三割ぐらいはあるということを、私は経験上知っている。
(2)の割合が五割、(3)が三割とすると、単純な計算の結果、
(1)のどうしてもやらねばならない仕事というのは、二割ということになる。
と考えてみて思い当たるのが、「入力の20%が出力の80%をもたらす」という
イタリアの経済学者パレートの法則である。
「仕事の重要度を十分に吟味して、
優先順位の高い20%のみ集中しなさい。
そうすれば、80%の結果は出ます。」
という経験則であり、この法則はそのままビジネスにもあてはまる。
「あれもこれも」ではなく、「あれかこれか」が大切であり、
Do it right(正しく行う)よりも、
Do the right thing(正しいことを行う)という考え方である。
リエンジニアリングによる「革新」もよいが、
その前に、パレートの法則の応用による「修正」を行っただけでも、
企業の生産性は著しく改善することは確かである。