松下幸之助氏は、人叱りの名人であったという。
旧松下電器の幹部たちは、全員、幸之助氏に叱られることで成長していった。
最近の若い人たちは、叱られ慣れしていない人が多く、
叱り方が難しいという上司の声をよく聞く。
私は、叱り方の極意は、
「叱られた人が、叱られる前よりもやる気が出てくる叱り方」
だと考えている。
叱られた人が、「然(しか)りごもっとも」と納得できる
叱り方でなくてはならないのである。
然り方には原則がある。
それは、「モノとコトを叱って人を叱らず」だ。
人を叱るとは、
「だからお前はダメなんだ!」
「何度言ったらわかるんだ。もう辞めてしまえ!」
というような、相手の尊厳を傷付け人格を否定する叱り方ことを指す。
人格を否定されては、叱られた方は立つ瀬がない。
叱った方は留飲が下がって気分爽快になるかもしれないが、
叱られた側には救いがなく、意欲も自身も喪失してしまう。
部下のやる気を奪うリーダーは、組織に害をもたらす「人罪」である。
一方、モノとコトを叱るとは、やり方が悪くて失敗したなら、
やったコトや、やり方を叱る、決してやった人を叱るのではない。
できたモノが悪いなら、モノについて叱るのである。
これが叱り方の基本だ。
モノとコトを叱ることで、個人の尊厳を傷付けることなく、
叱られる方も次のステップへ進むことができる。
モノとコトを叱るのは、前向きな叱り方なのである。
さらに一歩進んだ叱り方は、
「今回は○○と○○はよかった。よくやった」
と、叱る前にまずほめ、次に、
「しかしツメが甘かったな。最後のチェックをもっと慎重にやるべきだった」
と、コトを叱り、最後に、
「ここを注意しなさい。君なら次はきっと成功する」
と、フォローを加える。
感情に流されて「怒る」ことは、
リーダーにとって厳に慎まなければならないことだ。
まして、「罵(ののし)る」となると、もはや救いようがない。
望ましい順番でいうと、「注意する→叱る→怒る→罵る」となる。