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経済・株式・資産

第1話 コロナウイルスが金融機関の本性をあぶり出す!

どうなる金融業界

 コロナウイルスショックは世界経済を直撃し、企業経営に大きな影響を及ぼしている。
このような危機に直面した時、先ず打つべきは、資金対策の一手である。

 

 売上減少や売掛金の入金遅延、場合によっては取引先の破綻も懸念される。販売先の経営動向を把握する中で、回収見込みを掴まなければならない。不要不急の支払いは止めて、投資案件は当然に再考だ。生産計画、仕入れ計画の見直しを行い、役員報酬など人件費を含めて削れるものは削り、向こう半年から1年間の資金繰りを立てる。

 

 その上で、取引銀行にも話をして、新規融資を申し込む。或いは、既存借入金の返済猶予が必要かもしれない。とにかく、長期戦も織り込んだ厳しいシナリオを前提として、手元資金に余裕を持たせること、さらなる悪化に備えることが最優先である。
 

 政府が打ち出している資金繰り対策融資の活用も併せて、取引銀行とはしっかり相談して欲しい。

 

 ①実態を把握すること。②見通しを立てること。③数字に落とし込むこと。の3点が、交渉をスムーズに進めるポイントになる。

 麻生財務大臣兼金融担当大臣は、感染拡大の影響を受けて民間金融機関に対して次のような要請を行っている。

 

 

 各民間金融機関におかれては、従来より事業性評価や伴走型支援といった事業者の実態把握と必要な支援に取り組んでいると承知していますが、今般の問題に対する対応はまさにこれまでの取組の真価が問われる局面です。2月7日の要請以降も、海外旅行者だけでなく国内旅行者の減少による観光業者の売上減少や中国からの部品・材料の調達難等による製造業者の生産減少等に伴う、事業者からの資金繰りに係る不安の声が、業種を問わず非常に多く寄せられているものと認識しております。

 このような状況を踏まえ、事業者の業況や当面の資金繰り等について、事業者訪問や緊急相談窓口の設置などをして、更にきめ細かく実態を把握して頂くよう強く要請します。特に、年度末は、資金繰りが更に厳しくなるおそれもあることから、資金面において事業者が年度末を乗り越えられるよう、

・ 既往債務について、事業者の状況を丁寧にフォローアップしつつ、元本・金利を含めた返済猶予などの条件変更について、迅速かつ柔軟に対応すること
・ 新規融資について、各金融機関の緊急融資制度の積極的な実施(担保・保証徴求の弾力化含む)に加え、政策金融機関や信用保証協会によるセーフティネット貸付やセーフティネット保証等の活用も含め、事業者のニーズに迅速かつ適切に対応すること
・ こうした事業者に対する支援を迅速かつ適切に実施できる態勢を構築すること

 を現場の営業担当者等を含めた金融機関全体に徹底頂きたいと存じます。また、事業者から不必要に多大な書類等を徴求することがないよう配慮願います。

 

 

 このように要請した上で、実際に対応した実績をモニタリングして行くと言っている。
政府としては、民間金融機関の自主性に任せていては不安であるという証なのだ。

 

 本来、金融機関は、このような危機にこそ地域経済を下支えする役割を担い、お上から言われなくても自主的に対応すべきであり、取引を拡大できるチャンスとも考えられるが、現実はそう甘くはない。金融機関の経営状況によって、かなり対応に差が生まれている。

 

 平時では大して違いが表れないが、今回のような危機に遭遇するとその銀行の本質が表れる。
窮地に追い込まれた時に人間の本性が表れるのと一緒だ。

 

 企業の話にしっかりと耳を傾け、親身になって対応するところもあれば、自己防衛が前面に出るところもあるだろう。相手によっては、新規融資どころか、いきなり返済を求められる事もあり得るということだ。

 

 だからこそ経営者は、相手の金融機関の事情も頭に入れて、交渉に臨む事は大切である。

 

 金融機関の経営環境については、金融緩和政策が永らく続いているためにどこも収益は厳しい。

 

 貸出金利の低下によって、従来からの個人預金を集めて企業に融資をして、その利鞘で儲けるというビジネスモデル自体が成り立たなくなってしまっている。加えて、地方経済の衰退で苦しくなっている地域金融機関は多い。

 

 そこで、地銀同士で合併・経営統合が起こり、支店の統廃合や行員のリストラも見られる。
儲からない分、コスト削減への取組みが急務になっているのである。

 

 ここ数年は、企業倒産が少なく不良債権発生が低水準だったおかげで黒字を維持していても、コロナショックで倒産が増えれば、赤字転落する金融機関は続出するだろう。

 

 経営状況の厳しい金融機関はリスクを取る余力が乏しくなるので、保証付き融資は別として、プロパー融資への対応は厳しくなると考えておいた方がよい。

 

 

 また、人材育成面においても違いが見られる。


 決算書の内容や保証・担保だけで判断するのではなく、事業内容や成長可能性等も評価するいわゆる事業性評価融資を実行する「目利き力」、顧客企業の事業発展を後押しする「コンサルティング力」などを備えた人材育成に取り組む銀行がある反面、相変わらずの担保主義から脱却出来ない銀行もまだまだ多い。

 

 今回のコロナショックは、この銀行の人材レベルや取引のスタンスを測る良い機会だと考えてほしい。

 

 政府の緊急経済対策による保証付き融資の取り扱いついては、全ての金融機関が積極的だ。しかし、それだけの単品セールスに終始するのか、それとも、顧客企業の事業の行く末にも目を向けようとしているのか、支店長や担当者の対応する姿勢に表れるはずだ。

 

 いくら経営体力は盤石でも、顧客に目を向けようとしていない金融機関は頼りにならない。

 

 コロナショックのような危機は、金融機関にとっても正に真価が問われる正念場である。
そして、元々厳しい経営環境の中で迫られていた経営改革を一気に加速させることにもなり、優勝劣敗、脱落する金融機関も必ず出てくるであろう。

 

 経営体力や顧客への向き合い方の違いが鮮明に表れてくる、それこそ”本性があぶり出される”訳である。
「金融機関なんてどこも似たり寄ったり!」と考えている経営者もいらっしゃるかもしれないが、これから益々違いが出てくる。

 

 事業を行う上で金融機関取引は不可欠なものであるからこそ、その違いを見極めながら取引していく事が、経営の安定化にもつながるのである。

 

 金融機関はこれから一体どうなるのか?
このテーマに沿って、金融機関の様々な変化を伝えて行きたいと考えている。

 

第2話 コロナ危機、緊急融資制度に目詰まりが起きている次のページ

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