このところにわかに外食産業の海外進出が注目を集め始めている。6月19日付の日経紙によると、2024年度以降に海外出店を拡大する意向を示す外食企業が44%に上り、前回調査から大幅に増えたとのこと。回答社数は300社となっている。業態別に見た場合、回転ずしでは海外展開している4社すべてが海外出店を増やす考えを示している。
そんな会社の代表がフード&ライフカンパニーズ(F&LC)である。2023年9月期のスシローの国内店舗数が641店舗であるのに対して、海外はアジアに135店舗となっている。これを2026年度までに、国内は16-19店舗の増加に対して、海外は268店舗の増加を計画している。
2023年9月期の国内スシローの売上は2,059億円、セグメント利益は49億円に対して、海外スシローの売上は661億円、セグメント利益は53億円と若干ながらもセグメント利益は海外が上回っている。ただし、これは2022年6月の広告に関する公取の是正勧告によって国内スシローの収益が大きく落ち込み、依然その回復途上にあるためである。2024年3月上期決算で見ると、セグメント利益は国内スシローが80億円に対して、海外は32億円と依然稼ぎ頭は国内であることがわかる。
ただし、海外の売上、利益は急成長中であり、2021年9月期の海外売上は170億円、セグメント利益は12億円の赤字であり、2022年9月期に初めて22億円の黒字に転じたばかりである。会社側では、回転ずし市場は今後、国内はほぼ成熟と見ており、企業成長自体が海外に依存した成長を目指している。
有賀の眼
外食産業が海外進出して、高成長を遂げるというイメージは意外に感じるかもしれない。しかし、実はこれは極めて歴史の必然とも言えるものである。国内企業が海外に出てグローバルに戦って勝つということは、当然、日本企業の得意とする分野である必要がある。ただし、過去を振り返れば繊維、電機、自動車、精密機械など当初は輸出で競争力を発揮して、貿易摩擦の問題もあって、海外に自ら進出する形がスタートで、今でもそれらの企業がグローバル企業として名をはせている。それゆえ、グローバル企業と言えば、そんな産業を思い浮かべよう。
しかし、長い歴史の中で、実はグローバルに成長した企業には、モノづくりの輸出型企業以外に様々なパターンがある。わかりやすいところで言えば、ユニクロがある。ユニクロは最初から海外で製品化して、日本で販売するところからスタートしたが、今や利益の62%を海外で稼ぐ企業に変身している。
それとはまた別に、食品企業では様々な企業が利益の50%以上を海外で稼いでいる。これも輸出がスタートというより、現地で製品を定着させるところから始まっている。キッコーマンはすでに利益の63%を海外で稼いでいるが、しょうゆという日本独特の食文化を海外に定着させるには途方もない時間がかかった。およそ50年もかけてそれを達成している。
今日では、訪日外国人が急増し、和食がユネスコの無形文化遺産に登録されるなどもあり、訪日外国人にも日本食が大人気である。こうして日本食のすばらしさが世界に認知され、外食産業がその日本食を武器に海外で外食店を展開することは、すでに受け入れ態勢が出来上がっているだけに、予想外に成長スピードが速いのではないかと考えられる。