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マネジメント

第173回 『補佐役の使命』

社長の右腕をつくる 人と組織を動かす

会社勤めをずっと続けようというビジネスマンにとって、選択肢は三つある。

《リーダー(指導者)》になるか、《スペシャリスト(専門家)》になるか、
《フォロアー(追随者)》になるか…、である。

このことについては、再三指摘するところであるが、
 「ナンバー2として、社長を補佐するといった生き方もあるのではないか。
  その場合の心得について教えてほしい」
といった質問を受けることがある。

たしかに、
リーダーシップの発揮の仕方やリーダーのあり方などを論ずる本には、
必ずといってよいほど、名参謀や補佐役が登場する。

そればかりか、《参謀》や《補佐道》を示す本すらあるほどである。

私も、安岡正篤先生の作品からは多くのことを学んだが、とりわけ、
紀元前の中国において斉国を治めた宰相 晏嬰(あんえい)と
君臣の関係をまとめた『晏子(あんし)春秋』を解説したものなどは、
トップのあり方とともに補佐役のあり方を追求しようという人にとって
大いに参考になるであろう。


とはいえ、書籍などで多く論ぜられてはいても、
私自身は補佐役に徹しようなどと強く意識したことはなかったし、
他人に補佐役の役割りを求めることもなかった。

合格点が80点だからといって最初から80点を目指すと
60点で終わる可能性が極めて高いように、
最初から二番手を目指そうということでは、それすら実現が怪しくなるものである。

それよりは、結果として80点で終わるかもしれないが、100点を目指そう。
目標は高く置こうというのが私のスタンスである。

つまり、係長であれば課長を、課長であれば部長をと、
《ナンバー3》よりは《ナンバー2》、《ナンバー2》よりは《ナンバー1》、
を目指してきたし、批判を覚悟のうえでいえば、
自分がそうである以上は他人もそう指向するのは当然のことだと、いまでも思っている。

そのため、文字通り私心を捨ててトップをサポートするという
補佐役やナンバー2の存在には、多分に懐疑的である。


しかし、よくよく考えてみれば、会社という組織においては
ナンバー2から末端の一社員にいたるまで、すべてはトップの補佐役なのである。

そして、ビジネスマンとして補佐役という使命を果たすことは、
それぞれの職責において、与えられた責任を果たすことだ。

課長であれば部長を補佐しよう、部長であれば取締役を…というのはもちろんであるが、
それよりも会社全体への貢献という視野をもって、
課長であれば課長、部長であれば部長の責務をはたしてこそ、
広い意味での補佐役の使命を果たすことになるのではないだろうか。

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