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- 社長の右腕をつくる 人と組織を動かす
- 第148回 『視点を変えると、メンターは身近にいる』
現在、多くの人間関係は、むしろ貧しく、
希薄なものに向かっているような気がしてならないのだが、
どうだろうか?
昔はよかった…というのは年寄りのセリフだが、
かつては、学校では寮生活や学生下宿が普通で、
先輩後輩という人間関係が築かれる土台があったし、
社会に出てからも、
県人会があったり、同じ学校出身者の会が盛んだった。。
不思議なもので、社会の出てみると、人は、
自分で意識している以上に、人とのつながりを求めていることに気づく。
といって、上司や同僚に対しては、完全に心を許しきれないところがある。
だが、県人会や同門会の人間関係は、
同じ組織内の縦横関係とは本質的に異なる人間関係をもたらしてくれる。
あまり損得勘定がないからである。
ときには、財界の大物などが顔を出したりすることがあり、
自分とは異なる次元で仕事をしている人と知り合う機会にもなっていた。
そうした人が、後続の人のメンターになり、
若い人たちの人生の水先案内人として、貴重な助言を与えたり、
間違った方向に進みそうになったとき、
さりげなく、進むべき方向を示したりしてくれたものだった。
世の中が激しく変わろうとしている時代には、とくにメンターの役割は大きくなる。
いまのような時代には、メンターをもっているかいないかで、
ビジネスマンとしてのあり方は大きく変わってくると思えてならない。
メンターとは、教師でも先生でもなく、あえていえば、それを超えた存在。
人生を支え、応援してくれる師だ。
より良く生きるための方向を示し、必要な時に必要な人を紹介してくれたり、
有益な情報をくれたり、精神的にも、ときには経済的にも支援してくれる。
自然素材を使ったバス用品などを扱う「ザ・ボディショップ」の元日本社長であり、
現在、レナ・ジャポン・インスティチュート代表の蟹瀬令子さんは、
かつては博報堂のコピーライターだった。
ある時期、子育てのため毎日五時には退社。
これが、同僚男性社員には面白くなかったらしい。
さまざまな批判を浴び、悩みに悩んでいた時、上司がこう言ってくれた。
「母親を一生懸命やるのも仕事のうち。気にする必要はない。」
このひと言で胸の暗雲を晴らした蟹瀬さんは、助言がいかに大切かを身をもって知り、
以来、《この人に認められたいと思える人》をメンターにしてきた。
そして、いつもその人だったら、どう思うか、どうするだろうかと思って
仕事をしてきたそうだ。
蟹瀬さんの夫はジャーナリストであり、明治大学教授の蟹瀬誠一さん。
夫もメンターの一人であり、つねに令子さんを精神面でも支え続けてきた存在だ。
ある時、70名くらいの会合で、「あなたにメンターはいますか?」と質問したら、
十名そこそこしか手をあげないので、驚いたことがある。
メンターは、そこにいるという存在ではなく、探し求めてつくるものなのだ。
《あの人にメンターになってもらいたい》と思える人がいたら、
こちらから積極的に働きかけて、知遇を得るようにすべきなのだ。
では、どんな人をメンターにすればいいのか。メンターとして仰げばいいのか。
簡単にいえば、《自分もあの人のようになりたい》と思うような人こそ、
メンターにもっともふさわしい。
基本になるのは、一にも、二にも、《尊敬できる人》である。
そうしたメンターが3人もいれば、ビジネスマン人生で何が起こっても、
そう翻弄されることはない。
ビジネスマン人生にも、いいこと、悪いこと、様々なことが繰り返し起こる。
突然、仕事上の荒波が押し寄せてきたとき、急に、周囲が引いてしまったような場合…。
そんなとき、メンターたちは、
それぞれの英知で、あなたに最もふさわしい指針を示してくれるはずだ。
急に「メンターを3人持て」と言われても、というなら、尊敬する人物を3人持つこともよい。
なぜ、1人ではなく3人なのか…。
尊敬する人といえば、当然、自分の目標とする人ということになる。
だが、どんな人にも個性があり、長所もあれば、短所もある。
だが、《3人 目標とする人》を持てれば、それなりにバランスがとれ、
誤った方向指示機になる可能性はなくなるからだ。
メンターのいる人の人生の成功率は、
いない人に比べると、
少なく見積もっても10倍以上高くなる。