以前にも申し上げましたが、私たちは、「自分が何を知らないか」を知りません。
たとえば、「実は、まだこのことをよく知らないんだ」というような会話をしているときは、その時点で「このこと」の存在は知っていることになります。私が言いたいのはそういう状態ではなく、まさしく「自分が何を知らないか」は、把握できないということです。
それともう一つ、「自分が知っていることの中で、相手の人がどれを知らないか」も分りません。
日常の会話の中で、「えー、知らなかったの!何であの時に聞いてくれなかったんだよ?」といったやり取りをよく耳にしますが、このような事実の結果でしょう。
こんなことは当然みんなが知っていることに違いないと思い込んで、あえて口に出して言わなかったことが、後になって大間違いであったという経験を、多くの方がお持ちなのではないかと思います。私もそうです。
情報の共有化は難しいですね。そして特に難しいのは、見えないものについての議論をする時に起きます。
見えないものとは、例えば「在庫」とか「システム」です。「えっ、システムが見えないというのは分りますが、在庫は見えるのではないですか?」 こうお思いの方も多いと思います。
もちろん在庫はモノですから、目で見えます。しかし、私がここで言おうとしているのは「在庫」という一般的な言葉なのです。
銀行からの借り入れが以前より難しくなっているこの時期、銀行の力を借りずにフリーキャッシュフローを潤沢にする必要性が高くなっています。そのためにはやはり、在庫削減が必要なので、多くの企業において在庫削減の議論が盛んです。
しかし、ただ単純に会社における在庫として、在庫回転率や在庫金額を数字で表して、多いだ、普通だ、少ないだとカンカンガクガクの議論をしていることが多く見受けられます。
しかし在庫と一口に言っても、工場内には材料在庫、中間在庫、完成品在庫があり、それ以外にも物流中の在庫や店頭在庫もありますよね。あるいは、現在よく売れて動いている在庫もあれば、全く動かない不動在庫と呼ばれるような在庫もあります。
このような場合、みんなが在庫という一つの言葉を使って議論しているけれど、それぞれの人の中でイメージしている在庫というものが全く別々ということが起きてしまい、いつまでたっても具体的な削減方法の議論に入れないといった現象が起きてしまいます。
そこで必要なのが、「現場・現物」です。一般論で会議室内で議論するだけでは答えが出ません。必ず現場で現物の在庫を前にして議論をするようにしていただきたいのです。
「現場・現物」の前に立つことによって、それまではただ頭の中での理解に過ぎなかった言葉や数字が、突然に手を伸ばせば触ることのできる全員に共通の現実に変わるのです。ここから全体最適の改善が始まります。
次回以降、現場・現物という言葉をどう活用するかについて具体的な事例をご紹介しながらご説明をしたいと思います。
そこで、次回までにぜひともやっておいて頂きたいことがあります。まず在庫に関する数字を見た上で、それを現場に行って、実際に目で見て確認してみるという体験をしておいていただきたいのです。
容器の中に入っているものであればのぞいて見て下さい。きちんとした状態で入っていますか?もし何箇所にも分かれて置いてあるようでしたら、探して全部あることを確認してください。全部見つかるかな?
油ほこりまみれの箱に入っているのでしたら、箱を開けて中身を見てください。あけてびっくり!!だったりして…。
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毎日とても暑い日が続くようになりました。読者の皆さま、どうぞ水分の補給を忘れず、体調管理に努めて下さいね。お元気で!
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