8月の上旬にアフリカのザンビアに行きました。そこでいろいろなプロジェクトを見学した時に、ある村の壁に貼ってあったプロジェクト計画表の中に、改善(KAIZEN)の文字をみつけました。(写真:1)
●写真1:ザンビアにて
KAIZENという言葉は英語に訳すと“continuous improvement”(継続的改善)になるそうですが、これでは私達がやっているカイゼンとは、何か違うという感じがします。
ただ続けているだけではないですからね。KAIZENで頑張っておられる現地の皆様に、敬意を表します。なお、このザンビア訪問のお話は、次回にご報告いたします。
さて、先回の続きで、現場・現物で在庫を見ると、どういうことが起きるかの事例をご紹介いたします。
精密機械製造を行っているB社で、社長を筆頭に会社の機能を代表する管理・監督職以上の人たち全員(約30名)が組み立ての現場に集まって、みんなで、すぐ(1ヶ月以内)に使わないモノと問題のあるモノにカードを貼って、その後カードが貼られたモノをすべて一ヶ所に運び出しました。要は、KZ法を実行したのです。
すべて製造の現場にあるものですから、製造の人たちには分っているものばかりであったか?というと決してそうではありませんでした。会社全体の大きな問題がたくさん発見されました。
(1)まず最初の驚きの声が出てきたのは、他工場から来た人たちからでした。「あれー、この部品がここにはこんなに余ってるんだー。よかった、もう少しで発注してしまうところだった!この部品少し分けて下さいね。
ナゼこういうことが起きたのかというと、実は同じ部品なのですが、それを使って作る商品をお納めする会社が違い、同じ部品でも呼び名も部品番号も違っていたのです。
そして、これらは各コードでコンピューターに登録されていたので、どんなに注意深くコンピューターの画面を検索しても、このような事実に気付かなかったのですが、現場で現物を見たらすぐに分かったのです。
(2)次の驚きの声は営業から出ました。「あれー、この仕入れ商品がここにある! いくら探してもみつからなくて大騒ぎしたヤツだよね。結局、再仕入れしたんだけど、ナゼここにあるんだろう?」
みんなが集まってワイワイガヤガヤやっているうちに理由が分ってきました。営業の人が注文をした時に、送り先をB社内の営業部の誰宛としないで、B社宛とだけしたため、受け入れをした人はそれが誰宛の何なのか分らず、自分の知っている範囲でいろいろな人に尋ねて回りました。
しかし、その商品がそれまでにB社には無かったものであり、聞かれた人の全員が、よく分からないし自分の担当ではないと答えたため、受け入れの人はその先どうしていいかが分らず、放置しているうちにこのような結果になってしまったようでした。そして発注した当人は既に退社していました。
(3)三番目の驚きの声は社長から上がりました。明らかに高額と分る部品が、山のように「すぐに使われないモノ」として並んでいるのです。
「一体どうなっているんだ!」と社長は怒りましたが、技術者は「この部品には有鉛のハンダが使われているのでもう使用できません」と 他人事のように答えました。
その技術の方には在庫を減らすという責任がないのでしょうから仕方がない発言とも思えますが、社長の怒りは収まらない様子でした。
これは在庫に関してはよく起きることであり、個別最適の目標展開の結果であるといえるでしょう。会社全体でそれぞれの部門が協力して在庫を減らす意識を持っていれば、このようなことは起きなかったと思います。
すなわち、設計変更の起きる前は、みんなで情報を共有化してチョビチョビギリギリに買ったり、作ったりするような動きが必要ですね。
いかがでしょうか?ここに書いたことはB社においてつい最近に起きた事実です。そして私の経験からすると、多少の違いはあっても大体はこんな感じで同じことがどこでも起きるのです。
うちだけは大丈夫ということは多分ないと思います。一人でコンピューターの画面を恐い顔をして睨んでいても絶対に分らないことが、みんなで現場・現物を前にして実行すると必ずこうなります。ぜひKZ法を実行してみてください。
B社の名誉のために付け加えますが、B社ではここで発見されたたくさんの問題について、全社プロジェクトを発足し早速改善を始めています。
夏、真っ盛り。体調を崩しやすい季節です。どうぞ皆様、冷たいものを飲みすぎないで、お元気でこの夏を乗り切ってくださいね。お互い頑張りましょう!
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