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第26回 スポーツ界のデータ活用

社長のメシの種 4.0

 

■米大リーグ(MLB)

 
 野球の米大リーグ(MLB)は、2008年から投球の速度や軌道を追跡するシステム・PITCHf/x(米Sportvision社)を全球場に導入し、2015年には投球の速度、回転数、打球の打ち出し角度、推定飛距離などを計測する弾道測定機器トラックマン(TrackMan)、カメラでグランド全体を撮影して選手の動きを追跡するトラキャブ(TRACAB:米ChyronHego社)を組み合わせたスタットキャスト(STATCAST)というシステムを全球場に導入している。
 
 
 トラックマンは元々軍事用レーダーを使った弾道測定技術を持つデンマークの会社だが、創業者らが「ゴルフの弾道追跡に、ミサイルの弾道を追尾する軍事用レーダーを応用できないか?」と考えてゴルフ用を開発、それが現在では野球やサッカーなどのスポーツで幅広く利用されている。
 
 
 
 
 

■フライボール革命

 
 これらのデータを活用することで生まれた新たな野球の打撃理論では、ゴロを打つことを避けて、打球に角度をつけて打ち上げることが推奨され、これにより大リーグの総ホームラン数は、それまで6年連続5,000本以下だったのが、2016年には7年ぶりの5,000本突破となる5,610本、2017年は史上最多の6,105本(それまでは筋肉増強剤使用が話題となった2000年の5,693本)、2018年は5,585本となった。
 
 
 速度98マイル(158km)以上、26~30度の角度で飛び出した打球は80%がヒット、多くがホームランになるという打球速度と角度のデータ分析から、打者が好成績を残す「バレルゾーン(Barrel Zone)」が発見され、これに着目したアストロズが意図的に飛球を打ってホームランを量産して、2017年のワールドチャンピオンになったことから「フライボール革命」と呼ばれた。
 
 
 その反面、データをもとに打者ごとに極端な守備位置が敷かれ(今シーズン3万2,000回、2年前より7,000回増加)、これまで内野手の間を抜けていたゴロが捕球されるようになり、年間三振数は2008年から11年連続でワースト記録を更新するなど、「ホームランか三振」という大味な野球となっている。
 
 
 
 
 

■ストライクゾーン判定

 
 大リーグは、今年2月末に米独立リーグのアトランティックリーグとパートナーシップを結び、新たな取組を独立リーグでテストして検討し、その後、大リーグでの導入する方式を開始した。
 
 
 3月8日に発表された新ルールの試験導入には、トラックマンを使ったボールとストライクの判定自動化システム、投手板から本塁までの距離を24インチ(約61センチ)延長、投手の打者3人以上との対戦義務、ゲーム中に投手交代やけが以外では他の選手・コーチがマウンドへ行くことの禁止、二塁ベースの左右に内野手が2人ずつ配置されていること(大幅なシフト守備の禁止)、本塁を除く各ベースのサイズの拡大、イニング間や投手交代の時間の1分45秒への短縮などがある。
 
 
 人気を再び盛り上げたい米大リーグのみならず、データ解析でワールドカップ・イングランド大会で南アフリカ(当時世界ランク3位)から歴史的勝利をつかんだラグビーや、試合中に監督がiPadのデータを見ながら作戦を判断しているバレーボールなど、スポーツの世界でのデータ活用の重要性は広がっており、来年の東京オリンピックに向かって、日本でも今後はスポーツのデータ化が加速しそうだ。
 
 
 
 
 
======== DATA =========
 
●トラックマン・ジャパン(ゴルフ)
http://trackmangolf.jp
 
●TRACAB
https://chyronhego.com
 
●STATCASTのデータ
http://m.mlb.com/statcast/leaderboard#exit-velo,p,2018

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