宇都宮ライトレール線の「覚悟」
どういう部分で? 順番に挙げていきます。まず、運行ダイヤがいい。平日は早朝4時台から24時台まで動いています。LRTは当然の話ですが「利用してもらってなんぼ」です。日常的な利用を促すには、「いつでも乗れる」というイメージの定着がカギを握ります。始発や終電の設定にしてもそうですし、運行頻度もそうです。この宇都宮に先行して開業している北陸・富山市のライトレールなど、まさにそうで、思い切った積極的なダイヤでの運用が功を奏して、利用客を引き寄せています。ここは一種の賭けのような部分もはらみますが、消極的な運行ダイヤですと、利用促進はおぼつきません。宇都宮のライトレールは頑張ったと感じさせます。
次に、「信用乗車」の仕組みを全面的に取り入れたことが挙げられます。宇都宮のライトレールでは、3両編成の車両の全てのドアにICカードリーダーを備えています。利用客はどのドアからでも乗れますし、どのドアからも降りられます(現金の場合は降りるドアが限られますが、ICカードでの支払いならどこから乗降してもいい)。
この信用乗車の仕組みを採用すると、公社時の運賃支払いで時間がかかることがないため、運転士のいるドアの前に降車する客が列をなす風景が原則なくなりますね。どこからでも降りられるわけですから。
これによって、ライトレールの運行遅延は明らかに防げます。「無賃乗車する不届き者が出るんじゃないか」という不安は残りますけれど、それでも信用乗車の仕組みを全面的に取り入れた。ここもまた、「便利なライトレール」といいうイメージ形成に寄与するはずです。
ちなみに、この宇都宮のライトレールは全線を通して複線です。コストが掛かっても、あえて単線での運用を避ける判断をしたのですね。この点でもダイヤ遅延を失せげる形になっています。
さらに、多くの停留場にパーク&ライドやサイクル&ライドの設備を用意しています。ライトレールに乗るまでの移動を円滑にできるような趣向です。前者はクルマを停められる場所の確保、後者は自転車の駐輪場です。また、こうした設備をもつ停留場のなかには、コンパクトではありますが屋根のある休憩スペースも設けてあるので、雨天時などには助かるでしょう。
こうした試みをすべて実行に移せたのは、覚悟の賜物ではないか、と私には思えました。覚悟というのは「思い切る」ところから始まるのだとも…。しっかり思い切るからこそ、地域全体にその覚悟は浸透していくのではないでしょうか。