社内ミーティングやお客様を迎えての打ち合わせなど、言葉によるコミュニケーションは欠かせません。しかしながら、話しやすい「音環境」については、あまり注目されていないようです。今回は、会議室における「音響」を取り上げ、明瞭で快適な「話しやすさ」を実現する工夫や装置をご紹介します。きっと会議がはかどる事でしょう。
問題例 その1 「聴き取り辛い」:
トンネルの中で話すと、相手の声がワンワンと響いて聴き取り辛い経験をした事があるでしょう。音には音源から耳にダイレクトに届く直接音と、壁、天井、床などを反射して耳に届く間接音の2種類があり、屋内や室内で、話す方と聞く方の距離が離れれば離れるほど、直接音よりも間接音が増えます。部屋が狭い、壁面がコンクリートのように堅い材質の場合、さらに間接音は増え、声はどんどん不明瞭になって聴き辛くなります。
問題例 その2 「話難い」:
スキー場で声が通らず会話に苦労した経験は無いでしょうか?これは、雪が音を吸収してしまった結果です。同様に、例えば倉庫やショールームのように広い空間で、音を吸収する物が沢山ある環境では、声を張り上げて話さねばならず、疲れてしまいます。
反射が多くても駄目、少なすぎても駄目。では、聴き取り易く話しやすい条件とは?それは、響きの「質」と「時間」に因ります。狭い空間では、反射の回数が多くなるので、発した声が重複しないよう残響時間は短い方が良いのです。逆に広い空間では、反射の回数が少ないので、残響時間は長めでも問題を起こしにくく、例えば、コンサートホールでは、クラシック楽器の小さな音をホール全体に響かせる事ができます。つまり、エネルギーの有効活用ですね。
では実際の会議を想定して、対策アイデアを。比較的狭い会議室で、コンクリート造り、ガラス張り、あるいは窓が大きいなど、音が響きやすそうな場合は、手を「パン」と叩いてみましょう。ビィーンと不自然な残響音が聞こえたら、それは有害な反射音。相対する壁面間で反射を繰り返している証拠なので、対策の検討を。相対する壁のどちらかを、厚手のカーテンや布で覆って音を吸収したり、本棚などで壁面を隠し、音を拡散できるようにすれば、症状を緩和できます。ビィーンと不自然な残響音は無くとも、響きで会話が不明瞭な場合は、表面が布地でボリュームのあるソファーを置くと、音を吸収して響きを抑えてくれます。
倉庫やショールームなどのオープンな広い空間で、反射音が少なく、話し疲れる環境では、パーティションなど、音を反射する設備を設けると良いでしょう。和式の大広間における屏風も、音の反射や拡散の役割を担ってきたのかもしれません。
その他、反射音とは異なりますが、最近は情報管理などセキュリティーの面から、短時間の打ち合わせの場合、社外の訪問者を内部の会議室に通さず、オープンなミーティングスペースを利用するケースが多くなりました。この際、パーティション越しにお隣の会話が聞こえて気になる事もしばしば。内容によっては非常に気になって集中力を削がれたり、お互いに情報の漏洩など、深刻な問題に発展する危険性もあります。そんな時は「マスキング」の活用を。マスキングとは、音を消してしまうのではなく、音で音を覆って聴き取り難くするという発想。喫茶店のBGMも、このマスキング効果を狙ったもので、随分と話し易くなるものです。
新設のオフィスでは、マスキングシステムを導入する事も可能です。既設のオフィスであれば、マスキング用の装置を導入すると手軽でしょう。最近では、研究の成果から、よりマスキング効果の高い音を出す装置も登場しています。
製品例: ヤマハ VSP-1
http://www.yamaha.co.jp/acoust/speechprivacy/vsp-1/
音響面でも話しやすい環境を整えれば、発言が活発になって議論が深まったり、商談が上手く進むかもしれませんね。