其の二十五
予算・目標はバランスシートから作成すべし(1)
「うちの事業にはリスクがない」という経営者に出会ったことがあります。
投資や融資の相談を受けていた時の話です。特に新規事業を行う経営者に多いのですが、こんな素晴らしい事業のどこにリスクがあるのですか、と真顔で言われます。
そこで私は親切にこう言ってあげました。
「そんなあなたの存在がリスクです」と。
けげんな顔されますが、リスクのない事業は絶対にありません。どんないい事業でも、やる人が間違いますとうまくいかないものです。
そんな経営者に限って、プロが作成したような素晴らしい事業計画を作成されるのですが、素晴らしい損益計算書の予想は記載されていますが、決まって予想バランスシートがありません。
それでは投資も融資も不可能です。
投資の世界では、将来を具体的に描く能力が絶対に必要と言われています。将来を具体的に考えると現実を冷静にみることができるものです。
経営の世界では、将来を具体的に考えること=バランスシートの目標を設定することになります。
だからこそ、予算・目標は、まず、バランスシートからになります。
予算や目標は、通常、損益計算書に関して作成されます。しかし、これでは絵にかいた餅にすぎませんし、嘘も簡単に書くことができます。
これからはバランスシートから作成する必要があります。
経営は結果といわれます。結果はバランスシートです。損益計算書や資金繰りではありません。
経営のスタートはいつもバランスシートです。つまり、期首のバランスシートに始まり期末のバランスシートで終わります。経営はこの連続です。
そうであれば、予算も着地であるバランスシートから策定すべきなのです。それも1年後だけでなく、2年後そして3年後まで必要になります。一度悪くなったバランスシートの状態はなかなか改善されない為です。
スカイダイビングで考えればイメージできます。
3000メートル上空の飛行機の中が、期首のバランスシートです。そして地上の着地地点が期末のバランスシート。途中の華麗なパフォーマンスが、損益計算書や資金になります。
いくら華麗なパフォーマンスを見せてくれても、着地に失敗したら終わりです。着地を考えないで飛行機から飛ぶ人はいないと思います。
期末のバランスシート、つまり経営の着地を考えないでスタートすることの危険性はご理解いただけたかと思います。
ですから、今後は、まず、着地であるバランスシートから予算、つまり目標を設定しなければなりません。
このようにまず、バランスシートの予算から策定し、損益計算書の予算や資金繰り計画は、バランスシートを達成する為にどうするかという視点に立って策定していくのです。
健全な経営を行っている会社のほとんどが、目標となるバランスシートを作成しています。
予算はバランスシートから作成することは頭で理解しても、どのようなバランスシートを目標にしていいのか、なかなかわかりません。
では、人はなぜリスクを冒してまでも事業を起こすのでしょうか。理由はさまざまです。
しかし、事業を行って財産を増やしたいという思いは皆さんが持っていることです。きれいごとでは経営は出来ません。慈善事業では経営は無理です。
バランスシートを良くし、その結果、売上や利益を上げ、財産を増やさなければ、事業自体、継続は無理なのです。
経営とは、事業の継続と言われる所以です。
いつの時代も、原理原則に反して行動しますと必ず無理がくるといわれます。ましてや、不況といわれたときほど、原理原則に戻ってしっかりと土台を築くことが、トンネルを抜け出すパワーになってくれます。
この土台がバランスシートになります。
目標バランスシート作成の話は次回にしましょう。