その昔、人々にとって、本が今のように身近でなかった時代、
イタリアのトスカーナ地方の山深き小さな村に、
本の行商人がいました。
その村の名は、モンテレッジォ。
村には何もなく、食べるにも困る暮らし。
村人たちは命懸けで国境を越え、
イタリア中に本を届けました。
そのおかげで各地に書店が生まれ、
さらには「本を読む」という習慣もが広まったという…
この伝説ともいうべき本の行商人のことをヴェネツィアの古書店で知った
著者の内田洋子さんが、その謎に迫るべく取材を重ねた賜物が本書です。
興味深いのは、この行商人を調べることが、すなわち、
本の歴史そのものと、つながっていくことです。
15世紀グーテンベルクの時代から、ルネッサンス、
世界初の文庫本の誕生、禁断の書、さらには
イタリアの権威ある書店賞(露店商賞)の発祥、イタリア統一…
と本好きにはたまらない逸話が次々と!
モンテレッジォはインフラの整った現代においても尚、
最寄り駅から車で3時間もかかるとのこと。
そんな不便極まりない村で、なぜ本の行商が始まったのか?
どのようにして本が広まっていったのか?
取材記として面白いばかりでなく、
ビジネス的な観点から行商人たちの知恵を追うのも一興。
また、『神曲』のダンテ、『老人と海』などで知られるヘミングウェイ、
イタリアオペラの父・ヴェルディらも登場。
本の歴史を知るのと同時に、本が人類の歴史をつくったことも感じさせてくれます。
まさに、本と本屋の原点が、ここにあり!
こんなに読み応えある素敵な本は、そうそうありません。
本好きな経営者、リーダー、涙ものの一冊。
さっそく読んでみてください!
ちなみに、モンテレッジォでは毎年夏に古本祭りが開催されています。
いつか僕も行ってみるつもりです。
尚、本書を読む際に、おすすめの音楽は
『イタリア・バロック・オーボエ協奏曲集』(演奏:シェレンベルガー、イタリア合奏団)